弁護士コラム

取締役会について

組織論
執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

取締役会を設置しなければならない会社

会社法は、以下のケースについて、取締役会を設置しなければならないと定めています。なお、取締役会設置会社は取締役が3人以上必要です(会社法331条4項)。

・公開会社
・監査役会設置会社
・委員会設置会社

ここで規定されている公開会社ですが、これは株式が上場されている会社だけを指すわけではありません。

会社法上、
「その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」
を公開会社といいます(会社法2条5号)。

六法全書したがって、株式の全てに譲渡制限がかかっている会社が非公開会社となり、それ以外の会社は公開会社ということになります。

親族会社をはじめとして、中小企業の多くは株式に譲渡制限を付しているケースが多く、非公開会社がほとんどです。この場合には、取締役会の設置義務はありません。

取締役会の権限

デイライト法律事務所企業法務チーム取締役会は、取締役全員で構成される意思決定機関です。法令や定款で株主総会の決議事項とされた項目を除いて、会社の業務執行すべてについて決定する権限がある非常に重要な機関です。

それとともに、取締役の職務執行の監督や代表取締役の選任及び解任も取締役会で行うこととされています。

また、以下の事項については、取締役に委任することができず、取締役会の専決事項とされています(362条4項)。これは取締役全員が協議することで、適切な意思決定がなされることを期待していると考えられています。

・重要な財産の処分及び譲受け
・多額の借財
・支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
・支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
・社債の募集に関する重要事項
・取締役の職務執行が法令・定款に適合することを確保するための体制の整備
・役員等の会社に対する責任の免除

上記のうち、「重要な財産の処分」に当たるかどうかは、当該財産の価格、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断するとされています(最判平成6年1月20日民集48巻1号1頁)。

また、「多額の借財」については、当該借財の額、その会社の総資産・経常利益に占める割合、借財の目的及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断することになっています。

実務上は、会社において、1000万円以上の案件は取締役会の決議事項とするといったように、取締役会で決議する基準金額を定めておくのがよいといえます。

 

取締役会の招集と議決方法

取締役会は、各取締役が招集権を有しています。そして、取締役会を開催する1週間前までに各取締役に招集通知を発送します(会社法366条1項)。監査役設置会社の場合には監査役にも招集が必要です。この期間は短縮することができ、実務上は3日間としている会社が多いです。

招集通知は書面による必要はありませんので、電話やメールでも構いません。

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数が賛成することで成立します。定款の定めにより、決議の要件を重くすることは可能ですが、緩和する方向で修正することはできません。

 

議事録の作成

有価証券報告書とボイスレコーダー取締役会の議事については、法務省令の定めるところにより議事録を作成しなければなりません。

当該議事録には出席した取締役、監査役が署名、記名押印しなければなりません。この議事録は10年間本店に備え置かなければなりません。

 

取締役会の開催頻度

取締役会の開催頻度について、会社法は明確に規定しているわけではありません。ただし、会社法は代表取締役に3か月に1回以上、自己の職務執行の状況を取締役会に報告しなければならないと定めており(会社法363条2項)、この規定からすれば、少なくとも3か月に1回は取締役会を開催することが求められていると考えられます。

取締役会は、会社の重要な意思決定機関であるとともに、代表取締役の監督機関でもあります。この取締役会が適切に機能することで、会社が円滑に業務を行うことができます。そのためには、取締役会を構成する各取締役の選解任について、十分な検討が求められます。

会社のガバナンス統制にご不明な点があれば、お気軽に企業法務に注力する弁護士にご相談ください。

 

 

 


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