変動費と固定費
企業を取り巻く経営環境は日々変化しています。
その中で企業を成長させていくためには、変化に柔軟に適応していくことが必要であり、経営者は日々意思決定を行わなければなりません。
適切な意思決定を行なうためには、経験や勘だけに頼らず、定量的な分析やシミュレーションを行い、その結果を踏まえることが重要です。
事業活動を分析したり、シミュレーションをする上で、費用(コスト)はかかせません。
費用には、P/L上の売上原価、販管費、営業外費用などがありますが、これらを変動費と固定費に分ける方法について、紹介します。
変動費と固定費は、売上の変動に「比例して」増減するか否かで判断します。
すなわち、変動費は、メーカーの場合には材料費、小売業の場合には売上原価、販売手数料、運送費などがこれに含まれます。
他方、固定費は、減価償却費、機械のリース料、人件費などです。
固定費と変動費の分け方
明確に分けることは難しいのですが、自社の事業の特性に応じて分けたほうが経営戦略を考える上で有益です。
具体的な分け方は、いくつかありますが、勘定科目法が便利です。これは勘定科目ごとに変動費か固定費かを決めてしまう方法です。
他に、高低点法、回帰分析法などもありますが参考程度でよいと思います。
限界利益と限界利益率
売上高から変動費だけを引いた利益のことを「限界利益」といいます。
また、この限界利益を売上高で割ったものを限界利益率といいます。
限界利益率は「売上高が一定額増加したときに、そのうちのどれだけの部分が利益の増加に結びつくか」という比率を意味しています。
したがって、例えば、ある会社にA、B、Cという3つの製品がある場合、この中で、限界利益率が一番高い製品に力を入れると利益が高くなります。(もちろん、市場等の環境にまったく違いがないと仮定した場合です。)
損益分岐点分析
企業の損益予測を立てるために、損益分岐点分析は有効なツールです。
損益分岐点売上高は、「利益=0」のときの売上高です。
これは、さきほどの固定費を限界利益率で割って算出可能です。
※変動費率=変動費/売上高
分子(固定費)を「固定費+目標利益」とすれば、目標利益を達成するための売上高が求められます。
また、将来、不測の事態によって売上が減少しても利益を出すことができるか否かを見るために、損益分岐点売上高と現在の売上高を計算することがあります。この比率を損益分岐点比率といいます。
事業構造の把握
企業外部からの調達が可能なもの:価値の提供料に応じて投入を機動的にコントロールできる→変動費
例:材料、外部委託、外注加工など
独自性があり、自社の競争優位の源泉となるもの:中長期のスパンで構築・投入を意思決定しなければならず、機動的にコントロールできない→固定費
例:ヒト、生産設備、開発ノウハウ、製造ノウハウ、物流ノウハウ、販売ノウハウなど
コスト削減について
例えば、ある企業が目標の営業利益を達成するため、コスト削減を経営課題にしたとします。
・固定費と変動費のいずれを削減するか
事業内容や市況にもよりますが、比較的、固定費の方が削減しやすいといえます。
・固定費のどれを削減するか
広告宣伝費は比較的、削減しやすい科目です。人件費も検討できますが、社員のモチベーションにも影響するので難しい科目です。