電子契約ってそもそも有効?
契約を締結する際、契約書を取り交わすことが多いわけですが、法律上は、明確な定めがある場合を除き、契約書がなくとも契約を有効に成立させることはできます。
【民法521条】
1項 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾したときに成立する。
2項 契約の成立には、法令に定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
契約書を作成するのは、もし事後で揉めた際、当事者間でどのような取り決めをしたのか明確にする(証明する)ためです。
そのため、当事者間の合意内容が確認できるのであれば、紙媒体である必要はないわけです。
電子契約のメリット
印紙税の節約
よく言われるのは、「印紙を貼る必要がない」という点です。
国税庁は、「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した 場合の印紙税の課税関係について」というものの中で、「注文請書の現物の交付がなされない以上、たとえ注文請書を電磁的記録に変換した媒体を電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならない。」と述べています。
ただし、「電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。」とされています。
注文請書など、現物そのものを紙で渡せば課税されますが、現物はデータとして保存し、そのデータ自体をメールで送信したりファックスしたりする分には課税されないということになります。
経費削減
電子契約書にすればまず紙代が節約できます。
その他、郵送費、切手代、インク代、印刷機の電気代といったものも削減できることになります。
コンプライアンス向上
データで一元的に管理をするわけですので、紙媒体の場合に比べ調査が行いやすくなります。
また、電子契約書に改ざんを加えられないように措置を講じることで不正を防止することもできます。具体的にはタイムスタンプの利用です。
なお、タイムスタンプ について規定する法律は現在ありませんが、政府の指定に一般 財団法人日本データ通信協会(以下「データ通信協会」といいます。)が挙げられていることがあります(電子帳簿保存法施行規則3条5項2号ロ)。
これを利用することで、タイムスタンプが示す時点以降改ざんされていないことを証明することができます。
その他
電子契約書を採用することにより、災害時に契約書が滅失したなどのリスクを回避することも可能になります。
電子契約のデメリット
電子契約書を利用できない取引
不動産取引における重要事項説明書等、定期借地契約等、書面化が義務付けられている類型については、電子契約書を利用することはできません。
※2020年10月22日、政府は、不動産売買や賃貸借契約の際、重要事項説明の書面を電子化し、メールなどで顧客に送れるようにする方針を決めています。そのため、今後の法改正によって電子書面(かつ非対面)を利用できるようになる可能性はあります。
電子化ができない類型
契約相手方の承諾・希望がなければ電子化ができない類型もあります。
たとえば、建設請負契約、下請会社に対する受発注書面、労働条件通知書、派遣労働者への就業条件明示書面といったものです。
そのため、自社だけが電子契約を利用する基盤を準備していたとしても、取引相手方の理解が得られなければなりません。
特定方式の電子署名
特定方式の電子署名の利用を要求される類型もあります。
たとえば、電子処方箋、地方公共団体との電子契約においては、特定の認証局が発行する電子証明書の添付が求められており、この証明書が準備できない限り電子書面を用いることができません。
証明書の期限
電子証明書を利用する場合には、証明書には1〜3年の期限が設けられています。
そのため、継続的取引を行う場合は別ですが、小規模かつ単発の取引を行うに際しては費用の方がかかる可能性があります。
※ちなみに、マイナンバーカードや住民基本台帳カードには、公的個人認証サービスで使用するための電子証明書が搭載されています。前者は5回目の誕生日まで、後者は発行から3年間有効です。