取締役会非設置会社とは
「取締役会非設置会社」(とりしまりやくかいひせっちがいしゃ)とは、取締役会を持たない株式会社のことをいいます。
そもそも「取締役会」って何だろう?
「取締役会」とは、取締役たちをメンバーとする株式会社内の組織のことをいいます。
日本の株式会社は、「会社法」という法律が定めているルールにしたがって作られています。
この会社法のルールでは、株式会社は、必ず「取締役」という役職を任命しなければなりません。
「取締役」の存在しない株式会社は、認められていません。
そして、「取締役会」とは、このような取締役たちをメンバーとする株式会社内の組織のことをいいます。
株式会社には「取締役会」が必要?なくても大丈夫?
日本の会社法ルールでは、上記のように、どんな株式会社であっても「取締役」は必ず選ばなければなりません。
しかし、ある種類の株式会社では、「取締役会」はあってもなくてもどちらでもよいとされています(※1)。
つまり、「取締役会」を持たなくてもよい株式会社があるのです。
一般に、規模の小さな株式会社では、「取締役会」を持たなくてもよいケースにあてはまることが多いです。
あなたの会社が取締役会を持たなくてよい会社かどうか、会社法に詳しい弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
※1 株式を他人に譲渡できる株式会社(典型例は上場企業。これを「公開会社」といいます)や、その他の一定の条件にあてはまる株式会社は、必ず「取締役会」を設けなければなりません。
すべての株式会社で「取締役会」を持たなくてよいわけではありませんのでご注意下さい。
詳細は会社法に詳しい弁護士にご相談下さい。
取締役会を持っている株式会社と持っていない株式会社
このように、日本の株式会社には、取締役会を持っている株式会社と、取締役会を持っていない株式会社があります。
取締役会を持っている株式会社のことを、取締役会を設置している会社ということで、「取締役会設置会社」(とりしまりやくせっちがいしゃ)と呼びます(会社法2条7項)。
参考:会社法|電子政府の窓口
逆に、取締役会を持っていない株式会社のことを、取締役会を設置していない会社ということで、「取締役会非設置会社」(とりしまりやくかいひせっちがいしゃ)と呼ぶことがあります(※2)
※2 より正確にいうと、「取締役会設置会社」は会社法の中に出てくるオフィシャルな言葉ですが(会社法2条7号)、「取締役会非設置会社」は会社法の中に出てくるオフィシャルな言葉ではありません。
そのため、公式な文書などでは、「取締役会非設置会社」のことを「取締役会設置会社以外の株式会社」のような表現で表すこともあります。
取締役会非設置会社と取締役会設置会社との違いは?
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違いは、株式会社の中に「取締役会」という組織があるかないか、という点です。
取締役会非設置会社 | 取締役会を持たない株式会社 |
取締役会設置会社 | 取締役会を持つ株式会社 |
ただし、取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違いはこれだけではありません。
実は、取締役非設置会社と取締役会設置会社では、会社法のルールが異なっている部分があるのです。
以下では、取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違いをさらに深く説明していきます。
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違い(1)―取締役の最低人数
すでに説明したように、株式会社には必ず「取締役」という人が必要になります。
ただし、取締役会非設置会社と取締役会設置会社では、会社の取締役の最低人数が違います。
取締役会非設置会社―取締役の最低人数は1人
取締役会非設置会社では、取締役の最低人数は1人です。(取締役の上限人数はありません。)
したがって、あなたの会社が取締役会非設置会社の場合、あなた1人だけを取締役とするような形も認められます(※3)。
取締役会設置会社―取締役の最低人数は3人
一方、取締役会設置会社では、取締役の最低人数は3人です。(こちらも、取締役の上限人数はありません)。
したがって、あなたの会社が取締役会設置会社の場合、あなた自身が取締役になるならば、さらに自分以外にあと2人、取締役になってくれる人を探して、取締役の人数が3人以上になるようにしなければなりません(※3)。
※3 ただし、会社の定款で取締役の最低人数を変更している場合があります。自分の会社の取締役会の最低人数を知るには、定款を確認しましょう。会社法に詳しい弁護士に定款をチェックしてもらうこともお勧めです。
会社の種類 | 取締役の最低人数 |
---|---|
取締役会 非設置会社 |
1人 |
取締役会 設置会社 |
3人 |
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違い(2)―代表取締役が必要かどうか
代表取締役とは、取締役の中から選ばれた特別な権限を持つ取締役です。
代表取締役は、会社を代表する権限(これを「代表権」といいます。)を持ちます。
代表取締役や代表権についてはこちらもご覧下さい。
取締役会非設置会社と取締役会設置会社では、代表取締役が必ず必要かどうかが異なっています。
取締役会非設置会社―代表取締役を選ばなくてもよい
まず、取締役会非設置会社では、代表取締役を選んでも選ばなくても、どちらでも構いません。
取締役会非設置会社で代表取締役を選ばなかった場合
取締役会非設置会社で、代表取締役を選ばなかった場合、その取締役会非設置会社には、取締役だけいて、代表取締役はいないことになります。
この場合には、取締役会非設置会社の取締役の全員が会社を代表する権限(代表権)を持ちます(会社法349条1項、2項)。
参考:会社法|電子政府の窓口
代表取締役がいないので、その代わりに、取締役の全員がまるで代表取締役であるかのように会社の代表権を持つわけです。
取締役会非設置会社で代表取締役を選んだ場合
取締役会非設置会社で、取締役の中から代表取締役を選んだときは、選ばれた代表取締役だけが会社を代表する権限(代表権)を持つことになります。
残りの取締役は、会社の代表権を持ちません(会社法349条1項ただし書き)。
参考:会社法|電子政府の窓口
取締役会設置会社―代表取締役が必ず必要
一方、取締役会設置会社では、取締役の中から必ず代表取締役を選ばなければなりません。
つまり、取締役会設置会社には、絶対に代表取締役がいるということです。
そして、取締役会設置会社では、代表取締役だけが会社を代表する権限を持つことになります(会社法349条4項、1項ただし書き)。
残りの取締役は会社を代表する権限を持ちません。
参考:会社法|電子政府の窓口
会社の種類 | 代表取締役が必要かどうか |
---|---|
取締役会 非設置会社 |
代表取締役はいてもいなくてもどちらでもOK |
取締役会 設置会社 |
代表取締役は絶対に必要 |
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違い(3)―監査役が必要かどうか
株式会社の「取締役」は、その株式会社で経営を担う役目の人です。
これに対し、株式会社には、「監査役」という役目の人がいることもあります。
「監査役」は、取締役が行う会社の経営や会社の財務状況などを監査する役目の人です。
「監査」とは、中立な第三者的立場から会社の様子をチェックすることです。
取締役会非設置会社と取締役会設置会社では、監査役が必ず必要かどうかが異なっています。
取締役会非設置会社―監査役を選ばなくてもよい
まず、取締役会非設置会社では、監査役を選んでも選ばなくても、どちらでも構いません(※4)。
ですから、取締役だけいて監査役なしの株式会社にしてしまうことも可能です。
※4 ただし、取締役会非設置会社でも、一定の規模を超える会社などは、監査役を必ず選ばなければなりません。
取締役会設置会社―監査役を選ぶ必要がある
一方、取締役会設置会社では、監査役を必ず1人以上選ばなければなりません(会社法327条2項)(※5)。
参考:会社法|電子政府の窓口
監査役は、取締役と同じ人が兼任することはできませんから、取締役会設置会社では、取締役とは別の人に監査役になってもらう必要があります。
※5 なお、一定の条件を満たす取締役会設置会社では、監査役よりもチェック権限の小さい「会計参与」という人を置くことができます。
規模の小さな取締役会設置会社では、監査役ではなく「会計参与」を置いていることも多いです。
「会計参与」の設置について、詳細は会社法に詳しい弁護士にご相談下さい。
会社の種類 | 監査役が必要かどうか |
---|---|
取締役会 非設置会社 |
監査役はいてもいなくてもどちらでもOK |
取締役会 設置会社 |
監査役は絶対に必要(監査役の代わりに会計参与でもよいことがある) |
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違い(4)―会社の業務に関する決定事項の決め方
株式会社を運営していると、会社のビジネスに関する様々な事項を決定しなければなりません。
例えば、新しい製品を開発するとか、銀行からお金を借り入れて設備投資をするとか、時にはある事業から撤退することを決める、などです。
このように、会社のビジネスに関する事項を決定することを「業務執行の決定」といいます。
取締役会非設置会社と取締役会設置会社では、業務執行の決定の方法が異なります。
取締役会非設置会社―取締役の過半数による多数決で決定
まず、取締役会非設置会社では、このような会社の業務執行の決定は、取締役の過半数(※6)による多数決で決めます(会社法348条2項)。
例えば、取締役会非設置会社で取締役が3人いるケースで、この会社が銀行からお金を借りたい場合は、3人の取締役の過半数による多数決(つまり、3人のうち2人以上が賛成すること)によってこれを決定します。
上記で説明しましたように、取締役会非設置会社は、取締役を1人とすることもできます。
取締役会非設置会社で取締役が1人の場合は、会社の業務執行の決定は、その1人の取締役が決めてよいことになります。
取締役会設置会社―取締役会の決議で決定
これに対し、取締役会設置会社では、会社の業務執行に関する事項は、取締役会の決議で決めます(会社法362条2項1号)。
参考:会社法|電子政府の窓口
つまり、会社法の定める手続に従って取締役会という組織の会議を開き、そこで取締役の過半数(※6)による決議を成立させることによって、会社の業務執行に関する事項を決定していきます。
※6 「過半数」の考え方は少し複雑なので、こちらの記事の説明もご参照ください。
会社の種類 | 会社の決定事項の決め方(業務執行の決定) |
---|---|
取締役会 非設置会社 |
取締役の過半数による多数決 |
取締役会 設置会社 |
取締役会の決議 |
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違い(5)―取締役の業務執行の権限
すでに説明したように、株式会社は、どんな会社であっても必ず「取締役」を選ぶ必要があります。
したがって、取締役会非設置会社であっても取締役会設置会社であっても、必ず「取締役」がいます。
しかし、同じ「取締役」であっても、取締役会非設置会社の取締役と取締役会設置会社の取締役では、会社の業務を進めていく権限(業務執行権限)の有無が異なります。
取締役会非設置会社―取締役は業務執行の権限を持つ
まず、取締役会非設置会社の取締役は、会社の業務を執行する権限(業務執行権限)を持っています(会社法348条1項、2項)。
参考:会社法|電子政府の窓口
「会社の業務を執行する」とは、会社のビジネスを具体的に進めていくということです。
このように、取締役会非設置会社の取締役は、会社法のルールによって、業務の執行を行う権限を持っています。
取締役会設置会社―代表取締役だけが業務執行の権限を持つ
これに対し、取締役会設置会社の取締役はどんな権限を持つでしょうか。
上記で説明しましたように、取締役会設置会社には最低でも3人の取締役がいて、その中から必ず代表取締役を選ばなければなりません。
典型例は、取締役会設置会社にA、B、Cの3人の取締役がいて、そのうちAが代表取締役であり、BとCはただの取締役(これを「平取締役」(ひらとりしまりやく)といいます)である、というケースです。
このように、取締役会設置会社には代表取締役とただの取締役(平取締役)がいます。
そして、取締役会設置会社では、代表取締役だけが業務を執行する権限(業務執行権限)を持ちます(会社法363条1項1号)。ただの取締役(平取締役)は業務執行権限を持っていません。
参考:会社法|電子政府の窓口
取締役会設置会社―平取締役にはどんな権限があるの?
では、取締役会設置会社の取締役(平取締役)はどんな権限をもっているのでしょうか。
じつは、会社法のルールでは、取締役会設置会社の取締役(平取締役)が持っているのは、取締役会に出席して意見を出し、取締役会の決議で1票を投じるという権限だけです(※7)。
取締役といえば会社の業務のリーダーというイメージが強いので少し不思議な気がしますが、取締役会設置会社の取締役(平取締役)は、取締役会の一メンバーとしての権限を持っているだけで、業務を執行する権限を持っていないのです。
※7 このように、会社法のルールでは、取締役会設置会社の取締役(平取締役)は業務を執行する権限を持たないことになっています。
ただし、取締役会設置会社の取締役(平取締役)が絶対に業務の執行をしてはいけない、ということではありません。
取締役会設置会社の取締役(平取締役)でも、取締役会で「この取締役には業務の執行を任せよう」などのように決めれば、平取締役でも業務を執行することができます(会社法363条1項2号)。
参考:会社法|電子政府の窓口
このように、取締役会設置会社の取締役(平取締役)で業務を執行することになった人のことを「業務執行取締役」と呼びます。
例えば、日本の大企業はほとんどが取締役会設置会社ですが、そのような大企業の中で「営業担当取締役」とか「研究開発担当取締役」といった、特定の担当部門を持つ取締役がいることがあります。これらは「業務執行取締役」の一例です。
会社の種類 | 取締役の業務を執行する権限 |
取締役会非設置会社 | 取締役は業務を執行する権限を持つ |
取締役会設置会社 | 代表取締役だけが業務を執行する権限を持つ 取締役は業務を執行する権限を持たない(業務執行権限を与えることはできる) |
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違い(6)―株主総会の役割
株主総会とは、株式会社の中にある、株主全員(※8)をメンバーとする組織のことです。
※8 例外的に、一部の株主だけをメンバーとする株主総会が存在するケースもあります。
取締役会非設置会社と取締役会設置会社では、株主総会の役割も異なっています。
取締役会非設置会社―株主総会は何でも決められる万能の機関
取締役会非設置会社では、株主総会で、会社に関するあらゆることを決定することができます(会社法295条1項)。
会社の組織に関すること、運営に関すること、管理に関することなど、株主総会はどんなことでも決定できる万能の組織なのです。
取締役会設置会社―株主総会は会社法などで許された一部の事項だけを決める制限付きの機関
一方、取締役会設置会社では、株主総会は、会社法と定款の中にリストアップされた限定的な事項しか決議することができません(会社法295条2項)。
会社法の中にリストアップされた事項には、例えば、取締役の選任や解任、財務諸表など重要な書類の承認、定款の変更などがありますが、取締役会設置会社の株主総会の権限は、取締役会非設置会社と比べてとても小さな権限となっています。
このように、取締役会設置会社で株主総会の力が大幅に制限されている理由は、取締役会設置会社には「取締役会」というもうひとつの組織がありますから、会社に関する決定事項のほとんどを取締役会で決めてよいことにし、会社にとって特に重要な事項だけを株主総会が決めればよい、という考えに基づいているからです。
取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違い(※9) | ||
---|---|---|
会社の種類 | 取締役会非設置会社 | 取締役会設置会社 |
取締役 | 絶対に必要 | 絶対に必要 |
取締役会 | ない | ある |
代表取締役 | いなくてもよい | 絶対に必要 |
監査役(または会計参与) | いなくてもよい | 絶対に必要 |
会社の決定事項の決め方 | 取締役の過半数による多数決で決める | 取締役会を開き、そこで決議して決める |
取締役の業務執行の権限 | 業務の執行をする権限がある | 業務を執行する権限は代表取締役だけが持つ |
株主総会の役割 | 会社に関するあらゆることを決定できる万能の組織 | 会社法か提案にリストアップされた事項だけを決議できる制限された組織 |
(※9) この表は、会社法の原則的なルールをまとめたものです。会社法のルールにはたくさんの例外があるため、株式会社によっては、この表の原則があてはまらないものもあります。詳しいことは会社法に強い弁護士にご相談下さい。
参考:会社法|電子政府の窓口
取締役会非設置会社のメリットとデメリット
これまで、取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違いを説明してきました。
それでは、実際に株式会社を作ってビジネスをしようとするとき、取締役会非設置会社とするのか、取締役会設置会社とするのか、どちらがよいのでしょうか。
以下では、取締役会非設置会社のメリット・デメリットを説明します。
取締役会非設置会社のメリットは、役員(取締役と監査役)の人数が少なくて済むことです。(取締役や監査役のことをまとめて「役員」と呼びます。)
取締役会設置会社では、取締役は最低でも3人以上必要で、さらに、監査役が1名以上必要になります。
つまり、取締役会設置会社は4人以上の役員がいなければなりません。
株式会社を作ろうとするとき、または株式会社を運営しているとき、4人以上の役員を常に確保するのは大変です。
自分が役員になるとしても、あと3人、役員になってくれる人を探してこなければなりません。
小さな会社では、役員になってくれる人が見つからず、仕方なく自分の家族を借り出して役員にしたり、よく知らない人を役員にしてトラブルになったりするケースも珍しくありません。
これに対し、取締役会非設置会社では、取締役の人数は最低1人でもかまいませんし、原則として監査役はいなくて構いません。
したがって、夫婦2人だけが取締役となって株式会社を運営するなどのことも、取締役会非設置会社であれば可能になります。
取締役会非設置会社のメリットとして、自分1人で会社を経営できるという点があります。
上述したように、取締役会非設置会社は、取締役会設置会社と異なり、取締役の最低人数は1人です。監査役も必要ありません。
つまり、あなたが株式会社を経営しようとするとき、取締役会非設置会社を選べば、あなた1人だけをその会社の役員(取締役)とすることができます。
このようにすれば、自分の知識と経験と能力を会社全体に及ぼしながら会社を経営できますし、他の役員と意見が合わずに衝突するということも起こりません。
もちろん、他の人に取締役になってもらって、相談しながら会社を経営するのもよい方法ですが、まずは1人で経営をしたいという人にとっては、取締役会非設置会社を選ぶことにメリットがあるといえます。
上述したように、取締役会非設置会社では役員は1人でもよいですが、取締役会設置会社では役員は最低でも4人必要です。
取締役会非設置会社では、取締役を1人にしたり、2人にしたりなど、取締役の人数を会社にとって必要な人数までに抑えることができますから、余分な役員に対して役員報酬を払う必要がありません。
これに対し、取締役会設置会社では、役員に対する報酬の支払いは最低でも4人分になります。
このような理由で、取締役会非設置会社には、役員報酬の総額が少なくてすむかもしれないというメリットがあります。
ガバナンスとは、企業が不正などを行わないように、企業の中にしっかりとしたルールと管理体制を持っていることをいいます。
ガバナンスは、「企業統治」とも呼ばれます。
取締役会非設置会社のデメリットに、取締役会設置会社と比較してガバナンスが比較的弱いということがあります。
取締役会設置会社は、取締役会を置くことが必須であり、取締役は3人以上が必要で、しかも監査役も必要な株式会社です。
したがって、取締役会設置会社では、もし取締役のうちの1人が不正な行為を行おうとしても、他の2人の取締役が反対することができます。
さらに、監査役が取締役の行為を監視しており、取締役の不正な行為を監査役がストップできる仕組みになっています。
このように、取締役会設置会社は、もともと取締役の不正を防止しやすいような体制が備わっています。
これに対し、取締役会非設置会社は、取締役が1人でもかまいませんし、監査役はいなくてもかまいません。
そのため、取締役1人だけの取締役会非設置会社で、その取締役が不正行為を行おうとしたとき、これをストップできる役割の人がいないことになります。
このように、取締役会非設置会社は、ガバナンスの仕組みがあまり備わっていない、というデメリットがあります。
取締役会非設置会社には、小さな会社だというイメージを持たれやすいというデメリットがあります。
株式会社には、小さな会社から大きな会社まで、様々な会社があります。
例えば、少人数で家族経営している株式会社もありますし、誰もが名前を知っているような巨大な上場企業も株式会社です。
このような様々な株式会社のうち、規模の大きな会社は、ほとんどが取締役会設置会社です。
例えば、株式会社が上場企業になる場合、その会社は必ず取締役会設置会社になる必要があります(※10)。
取締役会非設置会社が上場企業になることはできません。
つまり、大規模な株式会社は、一般に取締役会設置会社であることが多いのです。
※10 委員会設置会社など、一般的な取締役会設置会社と異なる形を持つ会社もあります。
このように、規模の大きい株式会社のほとんどが取締役会設置会社なのは、株式会社の規模が大きくなればなるほど、株主や取引先などの利害関係人の数も多くなるため、会社のガバナンスが重要になってくるからです。
このように、規模の大きな株式会社はほとんどが取締役会設置会社である、というイメージが社会の中に浸透しています。
そのため、取締役会非設置会社は、逆に、家族経営の会社や規模の小さな会社だ、というイメージを持たてしまいがちです。
取締役会非設置会社のメリット・デメリットのまとめ
取締役会非設置会社のメリットとデメリットをまとめてみました。
取締役会非設置会社のメリットとデメリット | |
---|---|
メリット | デメリット |
|
|
結局どっち?取締役会非設置会社か?取締役会設置会社か?
以上のように、取締役会非設置会社にはメリットがある反面、デメリットもあります。
株式会社をつくってビジネスを行うには、結局、取締役会非設置会社と取締役会設置会社のどちらがいいのでしょうか?
ひとつの選択肢として、まず取締役会非設置会社としてビジネスをはじめ、会社の規模が大きくなってきたタイミングで取締役会設置会社に移るという方法が考えられます。
このようにすれば、会社の規模が小さいときには少人数役員でコストを抑えた経営をし、会社が大きくなってきてガバナンスの重要性が増してきたタイミングで取締役会設置会社に移行することができます。
取締役会非設置会社にするか取締役会設置会社にするかは、そのほか個々の会社の様々な事情を考慮して決めるのがよいケースもありますので、悩んだときは会社法に詳しい弁護士に相談するのがお勧めです。
取締役会設置会社が取締役会非設置会社に移行できる?その逆は?
取締役会設置会社は、取締役会非設置会社に移行することができます。
また、逆に取締役会非設置会社が取締役会設置会社に移行することもできます。
会社法のルールで、そのような移行が認められているのです。
このような会社法のルールを活用し、それぞれの会社の状況に合わせて柔軟に、都合の良いタイミングで、取締役会非設置会社の形を選んだり取締役会設置会社を選んだりすることができます。
取締役会非設置会社・取締役設置会社への移行は、株主総会での定款変更決議が必要になります。
株主総会決議のあとは、登記申請も必要です。
スムーズな移行のためには、このような法律上の手続面だけでなく、会社の様々な状況を考慮にいれた総合的な配慮のもとで行うのがよいでしょう。
少し複雑な作業になりますので、会社法に詳しい弁護士にアドバイスを求めるのもよいでしょう。
取締役会非設置会社の法務のポイント
会社法のルールは、取締役会非設置会社と取締役会設置会社で異なるルールを設けていることがあります。
この章では、取締役会非設置会社の法務のポイントを会社法のルールに基づいて説明していきます。
以下で説明する事項は、取締役会非設置会社の法務のポイントです。
取締役会設置会社にはあてはまらないことがありますのでご注意ください。
株主総会の招集や決議事項について
株主総会で決定できること(株主総会の決議事項)―どんなことでも決定できる
取締役会非設置会社では、株主総会は万能の機関です。
取締役会非設置会社の株主総会は、会社に関するあらゆる事項を決定する権限を持っています(会社法295条1項)。
株主総会で決定された事項は、会社の正式な決定となりますから、取締役はその決定にしたがって会社を運営しなければなりません。
株主総会の招集通知を発送するタイミング―原則1週間だが短縮可能
取締役会非設置会社では、株主総会の招集通知は、株主総会の開催日の1週間前までに発送することが原則です(会社法299条1項)。
さらに、取締役会非設置会社は、定款の中に規定をつくれば、1週間よりももっと短い期間を定めることができます。
例えば、「株主総会の招集通知は株主総会の開催日の前日までに発する」というような定めも可能です。
参考:会社法|電子政府の窓口
株主総会の招集通知の方法―口頭で伝えるだけでよい
取締役会非設置会社では、株主総会の招集通知は、書面(いわゆる紙ベース)で送る必要はありません。
株主総会の招集通知を株主に対して口頭で伝えるとか、電話で伝えるという方法も可能です。
定款について
「定款(ていかん)」とは、会社のいちばん基本的なルールブックのことです。
定款は、「第〇条 当会社は…」というような条文の形で作られています。
定款は、株式会社を設立するときに必ず作らなければならないものです。
そのため、どんな株式会社にも必ず定款が存在しなければなりません。
もし、「自分の会社の定款が見当たらない」という場合は、早めに会社法に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。
定款には、会社の名前(法律用語で「商号」といいます)、会社が行う事業の種類、発行できる株式の数、会社の組織のあり方など、株式会社のいちばん重要な事項を定める規定が含まれています。
定款の持つ力(定款自治の原則)
株式会社は、会社法で許される範囲内であれば、会社自身で定款の中身を調整することができます。
例えば、この記事のはじめの方で、取締役会非設置会社では、会社法のルールにより、取締役の最低人数は1人である、と説明しました。
しかし、取締役会非設置会社は、定款の中に、この会社法ルールと異なる定めを設けることができます。
例えば、取締役会非設置会社が定款の中に「当会社には取締役を2名以上置く」のような規定を作った場合、その定款のルールが会社法のルールに優先します。したがって、このような取締役会非設置会社では、取締役の最低人数は2名になります。
このように、定款の中に作ったルールが会社法のルールに優先することを、「定款自治の原則」といいます。
定款の変更
定款は、会社を新しく作るとき(会社を新しく作ることを「設立」といいます)に必ず作成しなければなりませんが、会社を設立した後で定款を変更することも、もちろん可能です。
定款を変更するためには、株主総会を開き、定款変更の決議を成立させる必要があります。
定款は会社にとってもっとも重要なルールブックですから、定款の変更は、通常の株主総会ではなく、「特別決議」という、より多数の株主が賛成する必要のある決議によって行います。
業務執行の決定について
「業務執行」とは、会社のビジネスを実際に運営していくことです。
例えば、株式会社に取締役A、B、Cの3人がいて、それぞれの取締役が自分で作業したり部下に指示を出したりしながら実際に会社のビジネスの陣頭指揮をとるイメージです。
上記で説明をしましたように、取締役会非設置会社では、取締役全員が業務執行を行う権限を持っています。
では、取締役会非設置会社で会社の業務執行に関して何らかの決定をしようとする場合、その決定はどのように行われるのでしょうか。
例えば、設備投資を行うために銀行からお金を借りる決定をすることは、「業務執行の決定」です。
取締役会非設置会社では、この決定をどのように行えばよいでしょうか。
取締役会非設置会社では、取締役は1人でも構いません。
取締役が1人の場合は、会社の業務執行に関する決定は、すべてその取締役が1人で行います。
取締役会非設置会社で、取締役が2人以上いる場合は、業務執行の決定は、取締役の過半数による多数決で行います。
例えば、取締役会非設置会社で取締役が5人いるケースで、会社が銀行からお金を借りるという決定をしたいときは、取締役5人で多数決をとり、3人以上が賛成すればその決定をすることができます。
なお、「過半数」の考え方は少し複雑なので、こちらの記事も合わせてご覧ください。
上記のとおり、取締役が2人以上いる取締役会非設置会社では、業務執行に関する決定は、取締役の過半数による多数決で決めます。
しかし、何かを決めようとするたびに毎回毎回多数決をとるのはとても面倒です。
そこで、会社法では、業務執行の決定を取締役に委任することが認められています。
「業務執行の決定を取締役に委任する」とは、例えば取締役会非設置会社にA、B、Cの3人の取締役がいる場合に、「営業部門に関する業務執行の決定は、A取締役が1人で決定してもよいことにしよう」というように決めることを言います。
このようにすれば、営業部門に関する業務執行の決定はA取締役が一人で決められますから、毎回毎回、取締役の過半数による多数決を取る必要がなくなります。
このように、取締役会非設置会社では、業務執行を取締役に委任することによって、日々のビジネスをスムーズに進められるようになります。
ただし、会社法のルールでは、このような取締役への委任をすることが禁止されている事項があります。
そのような事項は、原則どおり、取締役の過半数による多数決で決めなければなりません。
取締役への委任が禁止されている事項は、次のとおりです(会社法348条3項)。
- 支配人の選任及び解任
- 支店の設置、移転及び廃止
- 株主総会を招集するときに決定する事項
- 会社の内部統制システムの整備
- 定款に取締役の責任の免除に関する規定がある場合の、取締役の責任の免除の決定
上記の事項は、担当の取締役を定めて決定をその人にお任せする、ということができません。必ず取締役の過半数で決めなければなりません。
参考:会社法|電子政府の窓口
もし、上記の事項にあてはまるかどうか不安なことがあれば、会社法に詳しい弁護士のアドバイスを求めることをお勧めします。
取締役会非設置会社における代表取締役について
すでに何度が説明しましたように、取締役会非設置会社では、代表取締役を選ぶことも、選ばないこともできます。
代表取締役を選んだ場合と選ばなかった場合では、「誰が会社の代表権を持つのか」が違ってきます。
代表取締役を選んだ場合は、代表取締役だけが代表権を持ちます。
代表取締役を選ばなかった場合は、取締役の全員が代表権を持ちます。
詳しくはこちらをご覧ください。
このように、取締役会非設置会社では、代表取締役を選ぶか選ばないかで、「誰が会社の代表権を持つのか」が異なってきますので、会社の運営がしやすいように、代表取締役を選ぶかどうかを検討するのがよいでしょう。
例えば、取締役会非設置会社で、取締役が自分(会社オーナー)と外部から来てもらった人の2名である場合に、会社の代表権の持主を自分だけに限定したい場合には、自分を代表取締役に選ぶことで、自分(会社オーナー)だけが会社の代表権を持つ形にすることができます。
取締役会非設置会社での代表取締役の選び方
取締役会非設置会社で代表取締役を選ぶためには、会社法のルールにしたがって手続をする必要があります。
なお、代表取締役は取締役の中からしか選べません。取締役でない人を代表取締役にすることができませんのでご注意下さい。
会社法では、取締役会非設置会社で代表取締役を選ぶ方法として、次の3つが認められています(会社法349条3項)。
参考:会社法|電子政府の窓口
①の「定款で代表取締役を定める方法」は、例えば、定款の中に「取締役〇〇(氏名)を当会社の代表取締役とする」(※11)というような定めを設けてしまう方法です。
ただし、会社の現在の定款にこのような規定がないときは、定款の中に新たにこのような定めを追加する手続きが必要です。
その手続は「定款の変更」の手続になりますから、株主総会の特別決議(普通の株主総会決議より多くの株主が賛成する必要のある決議)をしなければなりません。
②の「定款の中に取締役どうしで互選を行う方法を定めておき、その方法にしたがって互選で代表取締役を選ぶ方法」は、例えば、定款の中に「取締役が複数いるときは、取締役の互選によって代表取締役1人を選定する」(※11)のような定めを設ける方法です。
定款の中にこのような定めを設けておけば、取締役の間で「互選(ごせん)」の方法をつかって代表取締役を選ぶことができます。
「互選」とは、取締役の全員が、取締役の中で誰を代表取締役にするのがよいか、1人1票ずつ投票して決めることです。
互選の方法は、代表取締役を選ぶために株主総会を開催する必要がないので便利です。
ただし、会社の今の定款に上記のような互選の規定がないときは、互選の方法はとれません。
この場合には、定款の中に互選の規定を追加するための「定款の変更」の手続が必要になります。
定款の変更には、株主総会の特別決議(普通の株主総会決議より多くの株主が賛成する必要のある決議)が必要です。
③の「株主総会の決議で選ぶ方法」は、取締役の中から代表取締役になる人を株主総会の決議で選ぶ方法です。
代表取締役を株主総会の決議で選ぶ場合は、特別決議ではなく、普通の株主総会決議で問題ありません。
※11 いずれの文言も、説明をわかりやすくするための一例です。実際に会社の定款に規定を追加するときは、文言の調整が必要になることがあります。詳しくは会社法に詳しい弁護士にご相談下さい。
取締役会非設置会社における議事録の整備について
取締役会議事録の作成はしなくてよい?
取締役会非設置会社は、取締役会を持たない会社です。
ということは、取締役会非設置会社は取締役会議事録を作らなくてよいのでしょうか?
取締役会設置会社では、会社の業務執行に関することは取締役会で決定します。
そして、取締役会で話し合われた事項が後々まで残るように、会社法のルールにより、取締役会議事録を作成して保存しておくことが義務づけられています(会社法369条3項、371条1項)。
参考:会社法|電子政府の窓口
これに対し、取締役会非設置会社には、取締役会そのものがありません。
会社の業務執行に関することは、取締役の過半数による多数決で決められます。
このように、取締役会非設置会社には取締役会そのものがありませんので、会社法のルール上、取締役会非設置会社は、取締役会議事録を作成しなくてもよいとされています。
したがって、取締役会非設置会社では、業務執行に関する決定を取締役の過半数の多数決で決めた場合でも、その議事録を作成する必要はありません。
上記のように、取締役会非設置会社では、取締役会そのものがありませんから、取締役会議事録の作成は必要ありません。
しかし、取締役が決定した事項が、会社の登記申請に関係するものである場合には、例外的に、「取締役決定書」などの書面(より正確には「取締役の過半数の一致があったことを証する書面」といいます)を作成する必要があります。
例えば、取締役会非設置会社であるX株式会社にA、Bの2名の取締役がいて、取締役の互選によってAだけを代表取締役に選んだとします。
一般に株式会社が代表取締役を選んだときは、その株式会社は登記申請をしなければなりません。
したがって、X株式会社も、法務局に対して「Aを代表取締役に選びました」という登記申請を行うことになります。
この登記申請を行う際には、株式会社は、法務局に対し、「間違いなくAが代表取締役に選ばれている」ということを証明するための書面を提出する必要があります。
もし、X株式会社が、Aを代表取締役に選んだことが書かれている取締役会議事録を作成していれば、その取締役会議事録を法務局に提出すればよいことになります。
しかし、X株式会社は取締役会非設置会社ですから、取締役会議事録は作成しません。
そのため、「間違いなくAが代表取締役に選ばれている」ということを証明できる取締役会議事録が存在しないことになるのです。
そこで、このような場合には、取締役会非設置会社であるX株式会社は、取締役会議事録の代わりに、「取締役の互選によってAが間違いなく代表取締役に選ばれた」ということを証明できるような書面を作って、これを法務局に提出することとされています。
このように、取締役会非設置会社で、「取締役の互選や過半数によってある事項が確かに決定された」ことを証明する書面のことを、一般に、「取締役決定書」とか「取締役互選書」などと呼んでいます。
このように、取締役会非設置会社は、通常は取締役会議事録を作成する必要はないのですが、登記申請が必要となる場面では、「取締役決定書」や「取締役互選書」の作成が必要になることがあるのです。
上記のように、取締役会非設置会社では取締役会議事録を作成する必要はなく、商業登記が関係しない場合には「取締役決定書」などの書面も作る必要はありません。
ただし、会社にとって重要な事項を決定した場合には、法律上の義務はなくても、自主的に取締役決定書などを作って、決定事項を証拠に残しておくことがよいケースもあります。
会社で重要な決定を行っても、口頭で決めただけでは、後でその決定があったことを証明することができません。
そこで、会社の決定を「取締役決定書」などの形で書面に残しておくことで、会社の決定が確かにあったことを示す強力な証拠を手に入れることができます。
特に、紛争トラブルが発生して会社が訴訟に巻き込まれてしまったようなケースでは、「取締役決定書」などの記録があると、とても心強い証拠になることがあります。
どんなときに「取締役決定書」をつくるべき?弁護士のアドバイスを!
以上のように、取締役会非設置会社には取締役会議事録の作成義務がありませんが、登記申請に関係するケースや、重要事項を決定するため証拠を残しておいた方がよいケースなどでは、「取締役決定書」などの作成を検討する必要があります。
どのような場合に「取締役決定書」が必要になるかの判断は、法的な知識に基づく判断が必要な場合がありますので、会社法に詳しい弁護士のアドバイスを求めることをお勧めします。
株主総会議事録
株主総会議事録については、取締役会非設置会社であっても、取締役会設置会社と同様にしっかりと作成して保存する義務があります(会社法318条1項、2項)。
参考:会社法|電子政府の窓口
取締役会議事録と混同してうっかり株主総会議事録を作り忘れた、などのことが起こらないよう、注意が必要です。
登記について
登記(とうき。より正確な用語では「商業登記」といいます。)とは、会社の情報を法務局に登録することです。
会社の状況に何か変化が生じたときは、会社は、法務局に対して、登記の申請をしなければなりません。
登記については、こちらの記事もご参照ください。
登記申請はどんな場合に必要?
取締役会非設置会社も、会社の重要な事項に変更があったときは、法務局に対して登記申請をする必要があります。
取締役会非設置会社が登記申請をするケースとしては、主に次のようなものがあります(※12)。
- 新しい取締役が就任したとき
- 取締役が重任したとき
- 取締役が任期の途中で辞めたとき
- 代表取締役を選んだとき
- 代表取締役が辞めたとき
- 取締役会非設置会社から取締役会設置会社になったとき
- 会社の名前や会社の本店の住所を変更したとき
※12 上記は登記申請が必要となるケースの一部をお示ししたものです。
これら以外にも登記申請が必要なケースはありますのでご注意下さい。
会社について何か変更を行った場合は、登記申請が必要かどうかについて、会社法に詳しい弁護士に相談するのもよい方法です。
登記申請をせずに放っておいたらどうなるか?
会社が登記をせずに放置することを登記懈怠(「とうきけたい」と読みます)といいます。
会社が登記をしなければならないのに、登記をせずに放置した場合は、会社にとって大きな不利益が発生することがあります。
登記申請をうっかり放置してしまわないよう、十分な注意が必要です。
登記申請をせずに放置した場合の不利益については、こちらをご覧下さい。
登記申請は弁護士に頼める
登記申請は、意外に手間がかかります。
必要な書類をそろえて法務局に提出し、法務局の登記官の審査を通過しなければなりません。
書類に不備があると、法務局に足を運んで書類の出し直しなどが求められることもあります。
弁護士は法律の専門家ですから、弁護士に登記申請を頼むこともできます。
弁護士に会社の法律問題を相談するときは、これと合わせて登記申請も同時に頼んでしまうこともよい方法です。
まとめ
以上のとおり、取締役会非設置会社について説明してきました。最後に、これまでの内容を簡単にまとめます。
- 「取締役会非設置会社」(とりしまりやくかいひせっちがいしゃ)とは、取締役会を持たない株式会社のこと
- 取締役会非設置会社には、会社法上の独特のルールが適用されることがある
- 取締役会非設置会社の取締役の最低人数は1人
- 取締役会非設置会社は代表取締役を置かなくてよい
- 取締役会非設置会社は監査役を置かなくてよい
- 取締役会非設置会社の業務執行の決定は取締役の過半数による多数決で決める
- 取締役会非設置会社の取締役は業務執行の権限を持っている
- 取締役会非設置会社の株主総会は会社に関する事項を何でも決められる万能の機関
- 取締役会非設置会社のメリットは役員の人数を抑えて会社を運営できること
- 取締役会非設置会社のデメリットはガバナンスが少し弱く、小さな会社だと思われやすいこと
- 取締役会非設置会社では株主総会の招集通知について簡単な方法がとれる
- 取締役会非設置会社で代表取締役を選んだときは、代表取締役だけが代表権を持つ。代表取締役を選ばなかったら取締役全員が代表権を持つ
- 取締役会非設置会社では取締役会議事録は作らなくてよい。ただし、場合によっては「取締役決定書」を作る必要があることも
- 取締役会非設置会社でも株主総会議事録は必要
- 取締役会非設置会社でも登記申請はしっかりと行うこと
以上、この記事が取締役会非設置会社の法務や取締役会非設置会社の設立を検討中のみなさまのお役に立てれば幸いです。