企業経営が順調に進んで行くと、自国の限られた市場だけでは成長に行き詰まりを感じるようになります。
企業が成長の壁を打ち破り、さらなる高みへと上っていくためにグローバル化を検討するのは当然と言えるでしょう。
また、海外の中でも、ハワイという楽園への進出はとても魅力的です。
しかし、その反面、異なる文化や法規制によって様々なトラブルや困難が予想されます。
ここでは、日本企業がハワイへ進出する理由、メリットとデメリット、実際に進出している企業の状況、そして、進出する際のポイントについて、くわしく解説しています。
実際にハワイに進出し、多くのクライアントをサポートしている弁護士がわかりやすく解説していますので、ぜひ参考になさってください。
目次
なぜ日本企業がハワイへ進出するのか
将来、日本市場は縮小していくことが予想されます。
その要因として大きいのは、人口の減少です。
総務省が公表しているデータによると、日本の人口は、2030年の1億1,662万人を経て、2048年には1億人を割って9,913万人となり、2060年には8,674万人になるものと見込まれています。
このような日本市場の行末を考えると、優良成長企業が市場を海外に求めてグローバル化していくことは、合理的といえるでしょう。
では、なぜハワイへ進出するのか。
ハワイへ進出する理由としては、以下のものが考えられます。
日本人が多い
ハワイの人口は、およそ144万人ですが、そのうち、現地に居住している日本人の数は2万3000人を超えています(2023年10月時点)。
また、ハワイ州の人口のうち、日系人(祖先が日本人)が占める割合は21%を超えているため、日本の文化が浸透しています。
ハワイに行くと、特にワイキキ周辺は日本人だらけであることがわかります。
これはハワイに居住する日本人に加えて、日本人観光客がとても多いからです。
新型コロナウィルスのパンデミックが始まる前(2019年)の日本人のハワイへの渡航者数は、157万6205人にも登っていました。
これは1日あたりにすると約4300人という驚きの数字となります。
このような日本人の数の多さが、日本企業がハワイへ進出する大きな要因となっていると考えられます。
つまり、企業が経済活動をする市場として、魅力的であるという点です。
ハワイに対する興味・関心が高い
当事務所は、ハワイへ進出する企業から多くのご相談を受けています。
企業の中には、上記で紹介した経済的な合理性ではなく、ハワイに対する興味・関心が高いことを理由に進出するケースもあります。
特に、中小企業の場合、経営者が「ハワイが好きだから」という理由で、進出するケースが多いです。
これは、日本企業に限ったものではありません。
ハワイには、美しい自然があります。
また、南の島でありながら、湿気が少なく、年中快適に過ごすことができます。
さらに、ハワイはリゾートでありながら、適度に都会です。
このような最高の環境が世界中の人々を惹きつけてやまない大きな理由となっています。
企業がハワイへ進出する5つのメリット
1. 企業が成長し発展することができる
日本のマーケットが縮小していく中、ハワイの市場が当該企業にとって魅力的であれば、ハワイに進出し、事業を展開することで、企業は成長・発展していくことが期待できます。
2. リスクを分散できる
企業の活動場所が広がると、様々な点でリスクヘッジが可能となります。
例えば、大規模な災害が発生したとき、基本的には事業所の数が多い方が企業活動は維持しやすいです。
また、グローバル化することは、景気や為替の変動に対してもリスクヘッジが可能となるため、企業の財務体制の安定にも資するといえるでしょう。
3. 従業員の士気があがる
企業がグローバル化するということは、その企業に「勢い」があることを物語っています。
特に、多くの日本人が憧れるハワイへ進出すること言うことになれば、多くの従業員の士気が上がり、日本国内においても、プラスの影響が出るでしょう。
企業の状況にもよりますが、国内の採用にもプラスに働くと考えられます。
将来、グローバルに活躍したいという優秀な人財を採用できる可能性があるからです。
4. 日本人の優秀なスタッフを雇用できる
ハワイは、他の州と異なり、日系の割合がとても高い州です。
また、日本人観光客が多いことから、日系以外の方でも日本語を学んでいる方がとても多いです。
外国において、日本語を話せる人財を採用しやすい環境といえます。
5. 開拓することの喜びを感じることができる
海外への進出は後述するようなデメリットも多くあります。
しかし、自社が海外へ進出し、成長発展していくことをイメージすると、ワクワクするのではないでしょうか。
日本国内だけで拡大していくことよりも労力はかかりますが、きっとそれ以上の「喜び」があるでしょう。
ハワイへ進出する3つのデメリット
1. 様々な法規制がある
海外進出時には、まずその国でのライセンスの有無や内容を調査しなければなりません。
また、事業活動を展開していく上で、様々な法規制があります。
これらを破ると大きなペナルティが課されてしまいます。
2. 治安の悪さ
ハワイは南の楽園というイメージがありますが、日本国内と比べると一般的に治安は悪いです。
特に、観光客を狙ったひったくり、車上荒らし、置き引き、スリ等の財産犯罪が多く発生しています。
もし、日本から従業員を派遣する場合は、このような生活状況の違いを考えてあげる必要もあるでしょう。
3. 居住コストの高さ
ハワイには、その魅力の高さゆえ、世界中から富裕層が移住しています。
また、移住しなくても、世界中の企業や裕福な個人がハワイの不動産へ投資しています。
そのため、ハワイの不動産は高額化しています。不動産の高額化は居住費の高額化へと直結します。
また、ハワイは島ですので物流が悪く、生活に必要な食料・水、その他の物も米国本土よりも価格が高い傾向です。
参考:Cost of Living in Hawai‘i 2022
ハワイ進出のメリット・デメリットのまとめ
メリット | デメリット |
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ハワイの日系企業の数
ハワイには、どのような企業がどれくらい進出しているのでしょうか。
政府の統計データによると、ハワイに拠点がある日系企業の数は192社で、そのうち、62社は宿泊業・飲食サービス業であると紹介されています。
2番めに多いのが卸売・小売業で30社、次いでサービス業が19社、製造業が16社、その他65社がとなっています。
参考:外務省|海外進出日系企業拠点数調査 2021年調査結果
この調査は、現地日系団体の協力や各企業へのアンケート調査を行って得た情報を集計したものにすぎないため、実際にはもっと多くの日系企業が進出しているものと考えられます。
しかし、業種の割合としては参考になるのではないでしょうか。
ハワイ進出時に押さえておくべき5つのポイント
1. 現地の法令調査
企業が外国で経済活動を営むためには、現地の経済関連法令、労働法、会社法等の法令を調査する必要があります。
企業が自社でこれらの情報を把握するのは困難なため、ハワイ州の弁護士の法的助言が必要となるでしょう。
2. 進出する形態の検討
日本企業がハワイに進出する場合、現地法人(米国法人)を設立する方法と、支店を設置する方法とが考えられます。
現地法人を設立する場合、どのような種類の法人を設立するのかを検討しなければなりません。
例えば、株式会社(Corporation)にするのか、有限責任会社(LLC:Limited Liability Companyの略)にするのか、といった問題です。
また、支店を設置する場合でも、登録手続きなどが必要となります。
このような重要な決定については、それぞれのメリットやデメリットについての法的な判断が必要となります。
また、法的な判断に加えて、税務上の効果も検討すべきでしょう。
したがって、ハワイ進出に詳しい弁護士や税理士に助言をもらいながら進めていかれることをお勧めいたします。
3. ビザの取得
日本の企業から海外に進出する場合、通常、日本企業から担当者(役員又は従業員)が派遣されることになります。
この場合、その方のビザの取得が必要となります。
ハワイは旅行しやすい国ですが、海外からの企業の進出や移住に対しては厳格です。
また、ビザの取得には相当な時間を要します。
そのため、十分な時間的余裕を持って専門家に相談し、ビザの準備を進めていく必要があるでしょう。
4. ハワイの従業員
ハワイで事業を展開していくためには、現地の労働力が必要となります。
そのために、良質な従業員を雇用することがポイントとなります。
現地の賃金相場や求人方法等に精通した専門家からの助言を受けることをお勧めいたします。
5. その他の情報収集
ハワイで事業を展開する際には、上記で述べたことの他に、現地企業の買収(M&A)、不動産投資、生活に関する重要な情報を集めることがポイントとなります。
そのため現地に精通した専門家から助言をもらうことが大切になります。
まとめ
以上、日本企業のハワイ進出について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
ハワイの市場が当該企業にとって魅力的である場合、ハワイへ進出することによって、企業の成長・発展を促し、リスクを分散できるなどのメリットが考えられます。
しかし、他方で、法令の規制などのデメリットもあります。
これらを克服するためには、ハワイ進出に精通した専門家の助言を受けることが重要なポイントとなります。
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