不正競争防止法違反とは?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

不正競争防止法とは

書類不正競争防止法は、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的」とする法律です(法1条)。

具体的には、事業者が価格や品質によらず競争する行為を不正競争行為と位置づけた上、不正競争行為に対する差止請求権や損害賠償請求権等を規定することで、不正競争行為を防止することを目的としています。

現行の不正競争防止法第2条は以下の行為について不正競争行為と定めており、以下のいずれかの行為に該当する場合には当該行為に対する差止請求等が認められます。


①混同惹起行為(
1号)
②著名表示冒用行為(2号)
③他人の商品の形態等を模写した商品を譲渡等する行為(3号)
④営業秘密に係る不正行為(4号~10号)
⑤技術的制限手段に対する不正行為(11号、12号)
⑥ドメイン名に係る不正行為(13号)
⑦誤認惹起行為(14号)
⑧信用毀損行為(15号)
⑨代理人等の商標冒用行為(16号)


なお、平成30年に不正競争防止法が改正されており、改正法では上記に加え、「限定提供データの不正取得・使用等に関する行為」が新たに不正競争行為と定められました。

 

 

不正競争防止法違反の効果

民事上の効果

不正競争行為が行われた場合、被害者が加害者に対して民事上取りうる手段としては、①差止請求、②損害賠償請求、③信用回復措置請求が考えられます。

差止請求

弁護士不正競争行為によって営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれのある者は、営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれのある者に対し、侵害の停止又は侵害の予防を請求することができます(法31項)。

「②損害賠償請求」とは異なり、故意又は過失が要件とされていないため、善意無過失で侵害行為が行われた場合でも差止請求を行うことが可能です。


【廃棄請求】
差止請求に併せ、侵害の行為を組成した物(侵害行為により生じた物を含む)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却、その他侵害の停止または予防に必要な行為を請求することが可能です。
廃棄請求を行うことで、侵害行為の差止請求をより実効的なものとすることができます。

 

損害賠償請求

他人の不正競争行為によって営業上の利益を侵害された被害者は、侵害者に対する損害賠償請求を行うことが可能です(法4条本文)。


【損害額の推定等】(法5条)

被害者が損害賠償請求を行う場合、被害者に生じた損害額を立証する責任は被害者自身にありますが、その損害額の立証は容易ではありません。とくに、他人の不正競争行為がなければ得られるはずであった利益(逸失利益)を損害の内容として主張する場合、他人の不正競争行為と自己の損害との因果関係を証明する必要がありますが、その証明は一般に困難であると考えられています。

そこで、法5条は損害額の推定規定を設け、被害者の救済を図っています。

法5条1項(逸失利益の算定)

法5条1項は、一定の不正競争行為を行った者(侵害者)が侵害の行為を組成した物を譲渡した場合について、「侵害者が譲渡した物の数量」に「被害者が販売する物の単位数量当たりの利益額」を乗じた額(被害者の生産・販売能力を超えない限度において)を被害者に生じた損害の額とすることができると規定しています。

もっとも、侵害者が、自身の営業努力や代替品の存在等の事情を理由として、「侵害者が譲渡した物の数量」を被害者が販売できなかったことを証明した場合には、当該事情に相当する数量が控除されます(同条項ただし書)。

法5条2項(損害額の推定)

法5条2項は、不正競争行為を行った者(侵害者)が不正競争行為によって得た利益の額を被害者に生じた損害額と推定するという規定です。

この規定は、あくまで推定規定であることから、侵害者が、市場における代替品の存在、侵害者の営業努力、広告、ブランド等の事情を理由として、被害者が侵害者の得た利益を得られなかったことを反証した場合には推定が覆ることになります。

法5条3項(使用許諾料相当額の請求)

法5条3項は、一定の不正競争行為を行った者(侵害者)に対する被害者の使用許諾料相当額の請求を認める規定です。

 

信用回復措置請求(法14条)

書類のイメージイラスト不正競争行為によって営業上の信用を害された者は、侵害者に対し、営業上の信用の回復をするために必要な措置を請求することができます。

必要な措置の例としては、新聞やHPへ謝罪広告を掲載させること等が考えられます。

 

刑事罰

不正競争行為の中でも違法性が高い行為については刑事罰が用意されています。

刑罰の内容は、


①日本国内における営業秘密に係る不正行為に対しては十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金又はこれらを併科する(法21条1項柱書)
②日本国外における営業秘密に係る不正行為に関し、一定の場合に対しては十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金又はこれらを併科する(法21条3項柱書)
③その他の不正競争行為に対しては五年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金又はこれらを併科する(法21条2項柱書)


と規定されており高額な罰金刑等を用意することによって不正競争行為を防止することが図られています。

 

弁護士のサポート

企業が新商品を販売する等新規の事業を始める場合や中途採用で新しく人材を採用するなどの場合、知らず知らずのうちにそれが不正競争行為に該当していることがあります。

いったん不正競争行為を行ってしまうと、民事上及び刑事上の責任追及をされる恐れがあるばかりではなく、企業が築いてきたブランドや企業に対する社会的イメージを傷つけることにもなります。

そのため、企業が事業活動を行う上で不正競争防止法の観点から弁護士によるリーガルチェックを行っておくことは極めて重要といえます。

 

 

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