営業秘密に係る不正行為とは?営業秘密管理のポイントと対策

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

営業秘密に係る不正行為

【営業秘密とは?】
「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術的又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう」(法2条6項)とされています。

 

弁護士すなわち、営業秘密にあたるには、

①秘密として管理されていること(秘密管理性)

②生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術的又は営業上の情報であること(有用性)

③公然と知られていないこと(非公知性)

が必要です。

秘密管理性

「秘密に管理されている」というためには、具体的状況に応じた経済合理性のある秘密管理措置を執ることにより、当該情報について、情報にアクセスした者が営業秘密であることを認識できるようにしておく必要があります。

どの程度の秘密管理措置を行えば経済合理性が認められるかという点については、情報の性質、保有形態、情報を保有する企業の規模等に照らして判断されることになりますが、「機密」や「○秘」の記載がなされた上で金庫の中に保管されている書類に記載されている情報やアクセス制限のされたデータ情報については「秘密に管理されている」と判断される可能性が高いといえます。

有用性

「生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術的又は営業上の情報」とは、製品の設計図や製法、顧客名簿、販売マニュアル等の情報のことです。

過去の失敗した実験データ等についても、再度の失敗を避け、研究開発費用の投資を節約できるという意味で有用性が認めらます。

結局のところ、有用性とは、社会通念上保護に値しない情報を除外するための要件であって、有用性が否定される情報の例としては、犯罪の手口や脱税の方法に関する情報など反社会的な情報が挙げられます。

【否定例 東京地判平成14年2月14日】
地方公共団体作成の土木工事設計単価に係る単価表の単価等の情報のうち非公開とされているものにつき業者が不正に入手したという場合において、「不正競争防止法は、このように秘密として管理されている情報のうちで、財やサービスの生産、販売、研究開発に役立つなど事業活動にとって有用なものに限り保護の対象としているが、この趣旨は、事業者の有する秘密であればどのようなものでも保護されるというのではなく、保護されることに一定の社会的意義と必要性のあるものに保護の対象を限定するということである。すなわち、上記の法の趣旨からすれば、犯罪の手口や脱税の方法等を教示し、あるいは麻薬・覚せい剤等の禁制品の製造方法や入手方法を示す情報のような公序良俗に反する内容の情報は、法的な保護の対象に値しないものとして、営業秘密としての保護を受けないものと解すべきである。」
「本件情報は、地方公共団体の実施する公共土木工事につき、公正な入札手続を通じて適正な受裁判注価格が形成されることを妨げるものであり、企業間の公正な競争と地方財政の適正な運用という公共の利益に反する性質を有するものと認められるから、前記のような不正競争防止法の趣旨に照らし、営業秘密として保護されるべき要件を欠くものといわざるを得ない。」と判断されており、有用性を否定した例といえます。

 

非公知性

「公然と知られていない」とは、当該情報が保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態にあることを意味します。

保有者以外の第三者が当該情報を知っている場合でも、第三者に守秘義務が課されている場合には「公然と知られていない」状態にあるといえます。

また、保有者以外の第三者が当該情報を独自に開発した場合でも、当該第三者が情報を秘密にしている場合には同じく「公然と知られていない」といえます。

 

【リバースエンジニアリングと非公知性】
いわゆるリバースエンジニアリング(市販の製品を分析・調査することにより技術情報を明らかにすること)によって、当該製品に用いられた技術情報が明らかになる場合、当該製品を市場に流通させる行為によって当該情報が非公知性を失うことなってしまうのかという問題があります。
結論としては、リバースエンジニアリングに必要な費用、技術、期間等に照らし、リバースエンジニアリングが容易ではない場合には非公知性を失うことはありませんが、容易にリバースエンジニアリングできる場合には非公知性を失うことになります。
もっとも、リバースエンジニアリングにより明らかになった情報が公表された場合には、当該情報は非公知性を失うことになりま弁護士すので、契約によりリバースエンジニアリングを禁止するかどうかを十分に検討すべきでしょう。

 

 

営業秘密に係る不正行為にあたる場合(法2条1項)

弁護士営業秘密にあたる情報について、以下のいずれかの行為を行った場合には営業秘密に係る不正行為に該当します。

①営業秘密の不正取得行為、不正取得後に営業秘密を使用・開示する行為(4号)
②不正取得された営業秘密を悪意又は重過失によって取得・使用・開示する行為(5号)
③不正取得された営業秘密を取得後に悪意又は重過失で使用・開示する行為(6号)
④保有者から示された営業秘密を図利加害目的で使用・開示する行為(7号)
⑤不正開示された営業秘密を悪意又は重過失で取得・使用・開示する行為(8号)
⑥不正開示された営業秘密を取得後に悪意又は重過失で使用・開示する行為(9号)
⑦営業秘密侵害品の製造者がこれを譲渡等する行為、営業秘密侵害品を譲り受けた者が悪意又は重過失でこれを譲渡等する行為(10号)

 

営業秘密の不正取得行為、不正取得後に営業秘密を使用・開示する行為(4号)

窃盗、詐欺、強迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為(不正取得行為)や不正取得行為によって取得された営業秘密を使用・開示する行為のことです。

「不正の手段」には、刑罰法規違反に該当する行為のみならず、それと同等の違法性を有する公序良俗違反の行為を手段とする場合が含まれるため、場合によっては営業秘密を口頭で聞き出す行為等も含まれると考えられます。

不正取得行為の例としては、営業秘密が記録されたPCやUSBメモリ等を窃取する行為、保有者のサーバーに不正アクセスし、保存されている営業秘密の電子データを取得する行為等が挙げられます。

「使用」とは、営業秘密の本来的目的に沿って用いることを意味し、技術情報である営業秘密を用いて製品を製造することや顧客名簿を用いて販売行為を行う場合がこれにあたります。

「開示」とは、営業秘密を第三者が認識可能な状態にすることを意味し、非公知性を失わない態様で特定の人物に示すことを含みます。

営業秘密を口外する場合はもちろん、技術情報について他社との間でライセンス契約を締結する場合も「開示」にあたります。

 

不正取得された営業秘密を悪意又は重過失によって取得・使用・開示する行為(5号)

警告のイメージ画像その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知っていたか(悪意)、または、通常要求される注意義務を果たせば容易に不正競争行為が介在した事実を知ることができた(重過失)状態で、不正取得された営業秘密を取得・使用・開示する行為のことです。

重要な技術情報について、その所持者の入手経緯を何ら調査することなく取得した場合には、何らかの調査を行えば容易に不正取得行為が介在した事実が判明するにもかかわらずこれを怠ったとして、重過失が認められることになるでしょう。

 

不正取得された営業秘密を取得後に悪意又は重過失で使用・開示する行為(6号)

営業秘密の取得後に、その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知ったか(悪意)、または、通常要求される注意義務を果たせば容易に不正取得行為が介在した事実を知ることができた(重過失)状態で、不正取得された営業秘密を使用・開示する行為のことです。

営業秘密の取得後にその営業秘密に関する不正取得行為が介在したとの報道がなされた場合や、営業秘密の保有者から警告を受けた場合などがこれにあたります(適用除外参照)。

 

保有者から示された営業秘密を図利加害目的で使用・開示する行為(7号)

新聞営業秘密の保有者が雇用契約、下請契約、ライセンシー契約等に基づき営業秘密を示した場合に、営業秘密を示された者が自己若しくは第三者に不正の利益を得させようとし(図利目的)、または、保有者に損害を与える目的(加害目的)で営業秘密を使用・開示する行為のことです。

営業秘密を保有する会社に勤務する従業員が、業務の中で知った営業秘密を競合他社へ開示し、対価を得る行為などがこれにあたります。

 

不正開示された営業秘密を悪意又は重過失で取得・使用・開示する行為(8号)

営業秘密を取得する際に、それが7号に規定された開示行為や法律上・契約上の守秘義務に反してなされた営業秘密の開示行為(不正開示行為)によること若しくはこれらの開示行為が介在したことを知っていたか、通常要求される注意義務を果たせば容易に知りえたにもかかわらず、営業秘密を取得・使用・開示する行為のことです。

営業秘密を保有する会社に勤務する従業員が、業務の中で知った営業秘密を競合他社へ開示した場合に、競合他社が当該営業秘密を取得する行為や営業秘密を使用する行為などがこれにあたります。

 

不正開示された営業秘密を取得後に悪意又は重過失で使用・開示する行為(9号)

IT営業秘密の取得後に、その営業秘密について不正開示行為が介在したことを知ったか(悪意)、または、通常要求される注意義務を果たせば容易に不正開示行為が介在した事実を知ることができた(重過失)状態で、不正開示された営業秘密を使用・開示する行為のことです。

営業秘密の取得後にその営業秘密に関する不正開示行為が介在したとの報道がなされた場合や、営業秘密の保有者から警告を受けた場合などがこれにあたります(適用除外参照)。

 

営業秘密侵害品の製造者が製品を譲渡等する行為、営業秘密侵害品を譲り受けた者が悪意又は重過失でこれを譲渡等する行為(10号)

技術上の情報である営業秘密を、法2条1項4号から9号に規定される態様で使用すること(不正使用行為)により製造された製品を、その製造者が譲渡、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は電気通信回線を通じて提供する行為及び当該製品の譲受人が、その譲受け時に当該製品について不正使用行為により製造されたことについて悪意又は重過失であった場合に当該製品を譲渡等をする行為のことです。

 

不正使用行為に関する推定規定

営業秘密の不正使用行為は、行為者の内部領域で行われることが多いため、営業秘密の保有者が不正使用行為がなされたことを証明することは容易ではありません。

そこで、技術情報たる営業秘密を不正取得した者が、当該営業秘密を用いて生産することができるものを生産等している場合には不正使用行為が推定されています(法5条の2)

【適用除外】
営業秘密の善意取得者に関する規定(法19条1項6号)
取引行為により営業秘密を取得した者が、その取得時において、当該営業秘密に関して不正取得行為や不正開示行為が存在したことを知らず、かつ、知らなかったことに重大な過失があるとはいえない場合には、取引によって取得した権原の範囲で営業秘密を使用・開示する行為が許容されます。
すなわち、取引行為によって営業秘密を取得した者については、法2条1項6号及び9号に定める使用・開示行為が許容される場合があり、営業秘密を取得した者が保護されているといえます。

営業秘密侵害品と時効の関係に関する規定(法19条1項7号)
営業秘密に係る不正行為の差止請求権には、3年間の消滅時効と20年間の除斥期間が定められている(法15条)こととの均衡上、差止請求権が消滅した後に営業秘密を使用して製造した物を譲渡等する行為が許容されています。
つまり、営業秘密に係る不正行為に対する差止請求権が時効により消滅した場合や除斥期間が経過した場合、法2条1項10号に定め弁護士る営業秘密侵害品の譲渡等の行為が許容されています。

 

 

営業秘密に係る不正行為が行われた場合の効果

民事上の効果

【秘密保持命令】
不正競争による営業上の利益の侵害に係る民事訴訟において、当事者の申立てにより、営業秘密を当該訴訟の目的以外の目的で使用してはならない旨又は命令を受けた者以外の者には開示してはならない旨の命令(秘密保持命令)が発令される場合があります。
秘密保持命令に違反した場合には、刑事罰が科されます(法21条2項6号)ので、秘密保持命令を受けた者が営業秘密保持命令を遵守すること、ひいては営業秘密が漏洩することなく保護されることが期待されます。

 

【訴訟記録の閲覧等制限】
原則として民事訴訟の記録は何人も閲覧することができる(民事訴訟法91条1項)とされています。
当事者の申立てがあった場合、裁判所は、訴訟記録の閲覧をすることができる者を当事者に限定する旨の決定をすることができるものの、当事者については訴訟記録を閲覧することができます(民事訴訟法92条1項)。
そこで、民事訴訟法92条1項の決定があった場合、裁判所書記官は、閲覧制限の申立てをした当事者に対し、閲覧請求があった事実を通知し、秘密保持命令の申立てを行うのに必要な期間(閲覧等の請求があった日から2週間)、訴訟記録のうち秘密記載部分の閲覧させない義務を負うと定められ(法12条1項)、営業秘密の保護が図られています。

 

【消滅時効・除斥期間】
営業秘密の不正使用行為に対する差止請求権については、営業秘密の使用を継続する場合において、営業秘密の保有者が不正使用の事実及び不正使用する者を知った時から3年以内に行使しない場合には時効により消滅します(法15条)。
また、不正使用行為が始まってから20年(除斥期間)が経過すると営業秘密の不正使用行為に対する差止請求権は消滅します(同条)。
なお、差止請求権が法15条により消滅した後に営業秘密の使用行為によって生じた損害については、損害賠償請求権が発生しないと定められています(法4条ただし書)。

 

民事上の効果(差止請求権、損害賠償請求権)についてはこちらをご覧ください。

刑事罰(営業秘密侵害罪)

営業秘密に係る不正行為のうち特に違法性が高いものについては、以下のとおり刑事罰の対象とされており、以下のいずれかの行為を行った者は「十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」(法21条柱書)とされています。

【不正取得行為に関する罪(1号)】
図利加害目的で詐欺当行為又は管理侵害行為により営業秘密を取得する行為に対する罪です。
民事上の不正取得行為(法2条1項4号)と比べると、図利加害目的が必要である上、行為態様がより限定されているといえます。

 

【不正取得後の使用・開示行為に関する罪(2号)】
1号の行為によって取得した業秘密を図利加害目的で使用・開示する行為に対する罪です。この場合も1号と同様、民事の場合(法2条1項4号)と比べると、図利加害目的が必要である上、行為態様がより限定されています。

 

【営業秘密の領得行為に関する罪(3号)】
営業秘密を保有者から示された者が、図利加害目的で、営業秘密の管理に係る任務に背き、権限がないにもかかわらず営業秘密を保有者の管理支配外に置く行為に対する罪です。具体的には、持ち出しが禁止されているにもかかわらず、保有者から預かっている営業秘密が記録された資料を、自己の利益を図るために、無断で外部に持ち出す行為等が禁止されます。
なお、この行為に関する罪については未遂犯の処罰規定はありません(法21条4項)。

 

【不正領得後の使用・開示行為に関する罪(4号)】
3号の行為によって領得した営業秘密を図利加害目的で使用・開示する行為に対する罪
です。

 

【役員・従業者による不正使用・開示行為に関する罪(5号)】
営業秘密を保有者から示された役員または従業者が、図利加害目的で、営業秘密の管理に係る任務に背き、その営業秘密を使用・開示する行為に対する罪です。
なお、役員・従業者による使用・開示行為が不正領得後の使用・開示行為に関する罪(5号)に該当する場合、本号は適用されません。

 

【退職者による不正使用・開示行為に関する罪(6号)】
営業秘密を保有者から示された役員または従業者が、図利加害目的で、在職中に営業秘密の管理に係る任務に背いて営業秘密の開示の申込みをし、又は営業秘密の使用・開示について請託を受け、退職後に営業秘密を使用・開示する行為に対する罪です。

 

【二次取得者の使用・開示行為に関する罪(7号)】
図利加害目的で、21条1項2号、4号~6号等の開示行為によって営業秘密を取得した上、営業秘密を使用・開示する行為に対する罪です。

 

【三次以降の取得者の使用・開示行為に関する罪(8号)】
図利加害目的で、21条1項2号、4号~6号等の開示行為が介在したことを知りながら営業秘密を取得した上、営業秘密を使用・開示する行為に対する罪です。

 

【営業秘密を違法使用することによって生じた物の譲渡行為等に関する罪(9号)】
図利加害目的で、21条1項2号、4号~7号等の使用行為によって生じた物を譲渡等する行為に対する罪です。

 

刑事手続の特例

刑事裁判は原則として公開されますが(憲法27条、82条)、営業秘密に係る不正行為が行われ、当該行為者対する刑事裁判が行われた場合に、営業秘密が裁判上明らかとなっては、裁判が行われることで営業秘密の保有者がさらに被害を受ける結果となるおそれがあります。

裁判そこで、営業秘密に係る不正行為に関する刑事裁判については、以下のような特例制度が用意され、営業秘密の保護が図られています。

【秘匿決定】
被害者等の申出により、営業秘密を構成する情報の全部または一部特定させることとなる事項(営業秘密構成情報特定事項)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定(法23条1項)がなされることがあります。

 

【呼称等の決定】
秘匿決定があった場合、裁判所は、営業秘密構成情報特定事項について呼称等を定めることができるとされています(法23条4項)

 

【尋問等の制限】
秘匿決定があった場合、裁判長は、一定の場合を除き営業秘密構成情報特定事項に関する訴訟関係人の尋問、陳述を制限することができます(法25条1項)。

 

【公判期日外の証人尋問等】
秘匿決定があった場合、裁判所は、公判期日外において証人尋問等を行うことができます(法26条1項)。
傍聴人のいない状況での証人尋問等になるため、営業秘密の保護を図ることができますが、尋問等を制限する(法25条1項)ことが相当でない場合等に行われます。

 

【証拠開示の際の秘匿要請】
検察官や弁護人は、証拠開示に際し、営業秘密構成情報特定事項が被告人を含む関係者に知られないようにすることを求めることができます(法30条1項)。

 

【没収・追徴】
裁判所は、付加刑として、営業秘密侵害罪にあたる行為によって生じた財産や営業秘密侵害罪にあたる行為の報酬として得た財産を没収、追徴することができるとされています(法21条10項)。
営業秘密侵害罪に該当する行為によって得た利益を行為者の手元に残さないことで、営業秘密侵害罪を犯す経済的メリットを消失させ、もって営業秘密侵害行為を防止することが期待できます。
なお、行為者の資力が乏しく民事上の損害賠償に支障が出る等の事情も考慮された上、没収、追徴が行われるかどうかが決定されます。

 

【海外重罰規定】
日本国外における営業秘密に係る不正行為に関し、一定の場合に、「十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」(法21条3項2号)とされ、国内で営業秘密に係る不正行為を行った場合よりも高額の罰金刑が用意されています。

 

 

営業秘密管理のポイントと対策

営業秘密は、企業が競争優位性を獲得・維持する上で不可欠である一方、自衛措置により不正競争行為への予防策を講じることが可能であるため、事前の対策が極めて重要といえます。

事前の対策

【不正競争防止法による保護を受けるための対策】
まず、不正競争防止法の保護を受ける観点から、不正競争防止法上の「営業秘密」として情報を管理する必要があります。
とくに「秘密管理性」の要件を充足するために必要な措置については、情報の性質や企業の規模により大きく異なりますので、当該情報に適した措置を施すにためには専門家のサポートが重要です。

【さらなる対策】
不正競争防止法は、営業秘密に該当するかどうか、営業秘密に係る不正行為に該当するかどうかという観点から、適用される範囲が限定されるため、情報管理の観点からは不正競争防止法による保護を受けるための対策さえ行っておけば十分であるとはいえません。
営業秘密に関する就業規則を作成したり、役員や従業者との間で秘密保持契約を締結することで、不正競争防止法の保護を受けない情報についても役員や従業者に対して秘密保持義務を課し、情報漏洩を防止することが可能です。

 

もっとも、企業の秘密情報のやりとりは秘密裏に行われることが多いため、情報の漏洩行為を発見することは容易ではありません。

そこで、役員や従業者について、競業避止義務に関する就業規則を作成したり、役員や従業者との間で競業避止契約を締結することで、役員や従業者が退職後に競合企業に就職する等の行為を行うことを防止し、ひいては企業の秘密情報が競業者に利用されることを防止することが可能となります。

弁護士宮﨑晃なお、就業規則や契約で定められた義務の内容次第では、秘密保持義務や競業避止義務が無効と判断される場合が少なくないため、就業規則や契約の内容については専門家のサポートが極めて重要といえます。

 

【技術的な秘密情報について】
特許を取得できるような発明を行った場合であっても、あえて特許出願せず、企業内の秘密情報として管理するという選択がなされることは少なくありません。
そのような場合、仮に情報漏洩があっても特許法の保護を受けられないため、徹底した情報管理を行い、もって情報漏洩を防止する必要があります。

 

 

被害にあった場合の対応

【差止訴訟、仮処分の申立て】
営業秘密に係る不正行為の被害にあった場合、まず当該不正行為の差止請求を行い、不正行為が継続することを防ぐことが重要です。また、仮処分の申立てを行うことで、近接した時点で不正行為が継続することを防ぐことを検討する必要があります。

【損害賠償請求】
差止請求にあわせて損害賠償請求を行う必要があります。

弁護士【民事訴訟、刑事裁判に関して営業秘密秘匿の働きかけ】
営業秘密に係る不正行為の差止訴訟や損害賠償請求訴訟を提起した場合や営業秘密侵害行為について刑事事件化した場合には、裁判上営業秘密が明らかにされる恐れがあるため、裁判所や検察官に対し、営業秘密を秘匿するようにて働きかけを行う必要があります。

 

 

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