取締役会非設置会社で取締役を解任するときの注意点【弁護士が解説】

監修者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家

取締役会非設置会社で取締役を解任するときの注意点

取締役会非設置会社とは

取締役会非設置会社とは、取締役会を持っていない株式会社のことです。

株式会社には、取締役会を持っている会社と、取締役会を持っていない会社があります。

取締役会を持っていない株式会社のことを「取締役会非設置会社」、取締役会を持っている株式会社のことは「取締役会設置会社」といいます。

このように、取締役会非設置会社と取締役会設置会社の違いは、まず第一に、取締役会を持っているかどうか、ということです。

ただし、違いはそれだけではありません。

会社法においても、多くの異なったルールを設けています。

 

 

取締役会非設置会社における取締役の解任手続き・流れ

取締役会非設置会社における取締役の解任手続きの流れ

取締役会非設置会社の取締役の解任とは?

「取締役の解任」とは、会社側が取締役を任期の途中で辞めさせることをいいます。

取締役の辞め方には、会社が辞めさせる「解任」のほかに、取締役が自分で辞める「辞任」や任期満了による「退任」があります。

あわせて読みたい
取締役の解任とは

取締役会非設置会社と取締役会設置会社では、会社法の定めるルールが異なっている事項がたくさんあり、取締役を解任しようとするときも、取締役会設置会社とは少し違った手続が必要です。

 

取締役会非設置会社の取締役の解任までの流れ

取締役の解任には、株主総会決議が必要!

株式会社が取締役を解任するときは、株主総会を開き、その株主総会で取締役を解任するという決議を成立させる必要があります(会社法339条1項)。

この記事では、取締役会非設置会社で、取締役を解任するために株主総会の決議を成立させるまでの流れを説明していきます。

取締役会設置会社で取締役を解任する手続は以下をご覧ください。

STEP1:株主総会を招集する

会社が取締役の解任をするためには、株主総会で「取締役の解任の決議」を成立させることがゴールになります。

そのために、まず臨時株主総会(※1)を招集します。

ここでいう「招集」とは、株主総会を会社法のルールにしたがって開催するための手続を行う、という意味です。

※1 株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会があります。定時株主総会は、1年に1回、株式会社の決算から3か月以内に開催する株主総会です。臨時株主総会は、必要に応じて臨機応変に開催する株主総会のことです。
取締役の解任は、突発的に必要になる可能性が高いので、この記事では臨時株主総会を開くという前提で解説をしていますが、もちろん、定時株主総会で取締役の解任を行ってもかまいません。

 

まずは株主総会の招集を決定する

取締役会非設置会社では、株主総会の招集を取締役が決定することができます。

株主総会の招集の決定とは、「株主総会を開きます」ということを決定することです。

もし取締役が2人以上いる場合は、株主総会の招集の決定は、取締役の過半数による多数決で決定します。

取締役のうちの1人が勝手に株主総会の招集を決定することはできません。

「取締役の過半数」とは、賛成した取締役の人数が取締役全員の人数の半数より多いことをいいます。

取締役の人数が2人のときは、その過半数は2人です。

取締役の人数が3人のときは、その過半数は2人以上です。同様に、取締役の人数が4人の場合は、その過半数は3人以上となります。

株主総会の招集は取締役の過半数による多数決で決定

このように、取締役会非設置会社で株主総会の招集を決定するときは、取締役の「過半数」の賛成によって決定する必要があります。

また、取締役が株主総会の招集を決定するときは、単に「株主総会を開きます」という決定だけでは足りません。

株主総会の招集を決定するときは、原則として、次の事項も決定する必要があります(※2)(会社法298条1項)。

 

株主総会の日時及び場所
株主総会の目的とする事項

「株主総会の場所」は、どこでも構いません。

会社の本店の会議室でも構いませんし、会社以外の場所を指定してもOKです。

「株主総会の目的とする事項」とは、株主総会で決定しようとしている議題のことです。

具体例

例えば、この記事で説明しているように株主総会で「取締役の解任」を決定しようとする場合は、「株主総会の目的とする事項」は、取締役の解任ということになります。

※2 ここに記載した2つの事項は、どんなケースでも必ず決定しなければならない事項です。

場合によっては、さらに次のような事項も併せて決定しなければならないことがあります(会社法298条1項、会社法施行規則63条)。

  • 株主総会に出席しない株主に書面による議決権行使を認めるとき(=株主総会に来ない株主でも書面で投票することを認めること)は、これに関係する細かな事項
  • 株主総会に出席しない株主が電磁的方法による議決権行使を認めるとき(=株主総会に来ない株主でも電子メールなどで投票することを認めること)は、これに関係する細かな事項
  • 株主総会の場所がこれまでに株主総会を開催してきた場所と大きく離れているときは、その理由、など。

参考:会社法|電子政府の窓口

あなたの会社がこれらに当てはまるかどうか不安なときは、株主総会を招集する前に、会社法に詳しい弁護士のアドバイスを求めることをお勧めします。

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株主総会の招集を決定したら、株主あてに招集通知を出す!

取締役によって株主総会の招集を決定したら、次に、株主に対して、株主総会の招集通知を出しましょう。

株主総会のメンバーは株主です。

「株主総会の招集通知」とは、株主総会のメンバーである株主に宛てた「株主総会を開くから集まってください」という通知のことです。

 

株主総会の招集通知はどのような方法で出せばよい?電話ではだめなの?

株主総会の招集通知は、手紙などの書面でもいいですし、電子メールで送ったり、口頭で直接に伝えたり、電話で伝えたり、どのような方法をとってもかまいません(※3)(会社法299条1項、会社法299条2項参照)。

これは、取締役会非設置会社だけに認められた特権です。

取締役会設置会社の場合は、株主総会の招集通知は、原則として書面(紙)で送らなければなりません(会社法299条2項2号)。

参考:会社法|電子政府の窓口

※3 取締役会非設置会社でも、欠席の株主に書面投票を認める場合など、一定の場合には、株主総会招集通知は必ず紙で行うことになっています。いつでも必ずメールや口頭での招集通知ができるわけではありませんので、ご注意下さい。

 

株主総会招集通知の内容は?

株主総会招集通知の内容について、何らかの事項を必ず入れなければならないという決まりはありません(会社法299条4項参照)。

とはいえ、株主総会の招集通知に株主総会の日時と場所が含まれていなければ、招集通知を受け取った株主がいつどこで株主総会に出席できるのかわかりませんから、株主総会の日時と場所は、株主総会の招集通知の内容として入れておきましょう。

じつは、これも取締役会非設置会社だけの特別ルールです。

取締役会設置会社の場合は、株主総会の招集通知には、その株主総会で決議をしようとする議題が必ず含まれるようにしなければなりません(会社法299条4項)。

参考:会社法|電子政府の窓口

 

招集通知はいつまでに出せばよい?
原則として「中1週間」

原則として、株主総会の開催日の1週間前までに、株主に対して招集通知を発する必要があります(会社法299条1項)。

参考:会社法|電子政府の窓口

この場合の「1週間前」とは、株主総会の開催日と、株主総会の招集通知を発送した日の間に、丸1週間のインターバルがあることをいいます。

 

具体例

例えば、株主総会の開催日をある金曜日としたときは、株主総会の招集通知は、その前の週の木曜日に発送しなければなりません。下の図をご覧ください。
招集通知はいつまでに出せば良いかの具体例

 

株主総会招集通知を総会直前にできるケース

取締役会非設置会社では、会社の定款(ていかん)に、株主総会の招集通知を送るタイミングをもっと株主総会の開催日に近い日にするという規定を設けることもできます(会社法299条1項)。

参考:会社法|電子政府の窓口

具体例
例えば、会社の定款に、「株主総会の招集通知は、株主総会の開催日の前日までに発する」という規定を設ければ、株主総会の招集通知を株主総会の前日に発送することも可能になります。
これも、取締役会非設置会社だけに認められた特別ルールです。取締役会設置会社の場合は、原則として、株主総会の招集通知は株主総会の日の1週間前、または2週間前までに送ることになっています(会社法299条1項)。

 

STEP2:取締役の解任を決議する

招集手続の中で決めた開催日時になったら、いよいよ株主総会を開催して取締役の解任の決議を行います。

株主総会で取締役の解任の決議をする際に重要なことは、会社法に定められたルールをしっかりと守りながら手続を進めることです。

もし、取締役の解任の手続の中に会社法のルールに違反した部分があったときは、株主総会が行った決議そのものが無効になってしまうこともあります。

特に、取締役の解任は、解任された取締役と会社との間の紛争トラブルに発生することもあります。

このように紛争トラブルが予想されるケースでは、特に、あとで株主総会の決議が無効にならないよう、会社法のルールをしっかりと守りましょう。

株主総会で取締役の解任を決議する場合の会社法のルールのポイントは、次のとおりです。

  • 株主の出席・投票の方法
  • 株主総会の定足数
  • 株主総会の決議の成立
  • 株主総会議事録の作成

取締役の解任の株主総会について、詳しいことは以下の記事にまとめてありますので、ぜひご覧下さい。

株主総会議事録の書式も以下のページからご覧いただけます。

 

STEP3:取締役の解任を登記する

さて、株主総会で取締役の解任の決議が成立したら、取締役は無事に解任され、会社を離れることになります。

しかし、それだけではまだ安心できません。

株主総会が成立したら、後に不要なトラブルに巻き込まれないよう、きちんとアフターファローをしましょう。

まずは、取締役の解任について、登記申請を行います。

「登記」とは、会社の状況に関する情報を法務局に登録することをいいます。

登録した情報は、誰でも見ることのできるデータベースに記録されます。

これによって、どのような人でも、日本中の会社の情報を見ることができます。

「登記」に含まれる情報には、会社の名前(これを「商号」といいます)、会社の事業内容、資本金の金額、会社の取締役の名前、代表取締役の住所と名前などがあります。

これらの情報に変更が発生したときは、会社は、法務局に対して登記申請をする義務があります。

取締役の解任をすると、会社の取締役の構成が変わりますから、会社には、登記申請をする義務が発生します。

登記申請をせずに放置すると、法律上、会社に対して不利益が課されることがあります。取締役を解任したら、すぐに登記申請を行いましょう。

取締役の解任の登記申請について詳しいことは、以下の記事をご覧ください。

登記申請の手続や、登記をしなかった場合の不利益などを弁護士が解説しています。

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登記って何?

 

STEP4:解任を通知する

株主総会で取締役を解任した後、解任した取締役に解任通知を送付しておくのも、アフターフォローとしてよい方法です。

「解任通知」とは、解任された取締役に対して、「あなたは取締役を解任されたので、もう当社の取締役ではありませんよ」という通知をすることです。

解任通知をすることで、解任された取締役が後に「解任されたとは知らなかった」と言い出すことを防ぐことができます。

解任通知は、法律上、絶対に必要なものではありません。

しかし、解任通知を送ることは、紛争トラブルの防止に役立ちます。

解任通知について詳しいことは、以下の記事をぜひご覧ください。解任通知のひな形もご用意しています。

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解任通知とは

 

 

取締役会非設置会社における取締役の解任事由

取締役を解任できないこともある?それとも好きなときに解任できるの?

株式会社は、会社法の定めたルールにしたがって株主総会で決議をすれば、取締役をいつでも解任することができます(会社法339条1項)。

根拠条文
(解任)
第三百三十九条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
2 前項の規定により解任された者は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができる。

参考:会社法|電子政府の窓口

「いつでも」というのは、会社が好きなタイミングで制限なしに取締役を解任できるということです。

 

解任できても損害賠償を請求される?「正当理由」の検討が大切!

このように、株式会社はいつでも取締役を解任することができます。

ただし、取締役を解任すると、解任した取締役から会社に対して損害賠償の請求がされることがあります。

ポイントは、解任について「正当な理由」があると認められるかどうかです(会社法339条2項)。

参考:会社法|電子政府の窓口

  • 取締役の解任に「正当な理由」がある
    会社は取締役を解任できる。解任した取締役から会社への損害賠償の請求は認められない。
  • 取締役の解任に「正当な理由」がない
    会社は取締役を解任できる。しかし、解任した取締役から会社への損害賠償の請求が認められることがある。

取締役を解任には正当な理由の検討が大切

このように、株式会社が取締役の解任を行おうとするときは、「正当な理由」が認められるかどうかによって、解任の後、会社が損害賠償を請求されるかどうかが変わってきます。

取締役を解任したことによって会社が不利な状況に追い込まれないよう、事前に「正当な理由」があると認められそうか、慎重に検討するのがよいでしょう。

「正当な理由」の判断は、そのときの会社の状況を分析し、さらに法令の解釈や過去の裁判例の参照なども行いながらの検討が必要です。

会社法に詳しい弁護士にアドバイスを求めるのもよい方法です。

取締役の解任に関する「正当な理由」や、どのような場合に「正当な理由」が認められやすいかについては、以下の記事で詳しく説明しています。ぜひご覧下さい。

 

 

取締役会非設置会社における取締役の解任に正当な理由がない場合の損害賠償請求

取締役を解任する際に、「正当な理由」がなかった場合でも、解任そのものは有効です。

ただし、「正当な理由」がなかった場合には、解任された取締役は、会社に対して、損害賠償を請求できるとされています(会社法339条2項)。

参考:会社法|電子政府の窓口

「損害賠償」と聞くと何かおそろしいイメージがありますが、実際にはどのような内容なのでしょうか。

取締役の解任で「正当理由」が認められなかった場合の損害賠償の金額は、一般に、①その取締役の任期満了までの報酬と、②その取締役が任期満了まで務めたと仮定した場合の退職金、の合計額であるとされています。

「正当な理由」がない場合の損害賠償について、詳しいことは以下の記事にまとめていますので、ぜひご覧下さい。

 

 

取締役会非設置会社における取締役の解任と退職金の問題

会社は、解任した取締役にも退職金を支払う必要があるのでしょうか。

取締役の退職金は、「退職慰労金」と呼ばれます。

会社が取締役を解任した場合でも、会社は、解任した取締役に対して退職慰労金を支払わなければならないことがあります。

会社が解任した取締役に対して退職慰労金を支払わなければならないかどうかは、過去に会社が取締役の退職慰労金について株主総会決議をしていたかなど、会社の状況によって判断が異なってきます。

少し複雑な判断になりますので、取締役の解任に踏み切る前に、退職慰労金を支払う必要があるかどうか、事前に会社法に詳しい弁護士に相談するのもよいでしょう。

取締役を解任した場合の退職慰労金の考え方については、以下に詳しく解説しています。ぜひ参考にされて下さい。

企業法務に特化した弁護士に相談はこちら

 

 

取締役会非設置会社における取締役の解任の訴えとは―裁判を起こして取締役を解任できる?

ここまで解説してきましたように、取締役の解任には、株主総会で取締役会の解任の決議を成立させるのが原則です

ただし、会社法には、もうひとつ、取締役を解任するルートが用意されています。

それは、「取締役の解任の訴え」というルートです(会社法854条)。

参考:会社法|電子政府の窓口

「訴え」とは、裁判のことです。つまり、会社法には、裁判を起こして取締役を解任するという方法が用意されているのです。

「取締役の解任の訴え」は、少数派の株主が利用できるのが特徴です。

株主総会で多数派になれない少数派の株主でも、「取締役の解任の訴え」を使って、裁判というルートで取締役の解任を実現することができます。

会社を運営する中で、「取締役の解任の訴え」に直面する可能性は低いでしょう。

しかし、「取締役の解任の訴え」についておおまかな内容を知っておくと、いざというときに慌てずに済みます。

「取締役の解任の訴え」については、以下に詳しい解説があります。ぜひご参考になさって下さい。

あわせて読みたい
取締役の解任の訴え

 

 

取締役会非設置会社における取締役の解任は積極的に使ってよい?それともほかの手段もある?

以上のとおり、この記事では、取締役会非設置会社における取締役の解任について、手続と注意点を解説してきました。

取締役会設置会社における取締役の解任については、以下の記事をご覧下さい。

会社は、取締役の解任の手続をすることによって、いつでも取締役を辞めさせることができます。

取締役の解任は、会社が使うことのできる強力な手段です。

一方で、「正当な理由」が認められないと解任した取締役から損害賠償を請求される場合があるなど、取締役の解任にはリスクもあります。

この記事の冒頭で少し説明したように、取締役の辞め方には、会社が取締役を辞めさせる「解任」だけでなく、取締役が自分から辞める「辞任」や、取締役の任期満了による「退任」などもあります。

会社の運営にあたっては、この3つの辞め方をうまく使い分けて、会社がトラブルに巻き込まれることのないようにしましょう。

この3つの辞め方の活用法については、以下の記事にまとめました。ぜひ参考にされて下さい。

 

 

取締役会非設置会社における代表取締役の解任

株式会社には、「取締役」だけでなく、「代表取締役」という役職の人がいることもあります。

ここからは、取締役会非設置会社における「代表取締役の解任」について解説していきます。

先ほどまで説明していた「取締役の解任」とは違いますので、ぜひ注意してお読み下さい。

取締役会設置会社における代表取締役の解任については、以下の記事に詳しい説明があります。

 

代表取締役とは?

「代表取締役」とは、取締役の中から選ばれた特別な取締役をいいます。

「代表取締役」は、取締役の中から選ばれる必要があります。取締役でない人が代表取締役になることはできません。

つまり、代表取締役とは、ベースとして取締役であることが必須であり、その取締役の中から会社法のルールにしたがって選ばれた特別な取締役のことなのです。

代表取締役には、取締役とは違った権限が与えられます。

具体例例えば、一般に、代表取締役は「代表権」という権限を持ちます。

「代表権」とは、会社の代表者として契約を締結したり、会社の意思を表示したりする権限のことです。

代表取締役は、取締役の中から選ばれた特別な取締役ですから、普通の取締役が持っていない権限を持つことになるのです。

代表取締役について詳しいことは、以下をご覧ください。

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代表取締役とは

 

代表取締役の解任とは?

「代表取締役の解任」とは、会社が代表取締役をその役職からおろし、ただの取締役に戻すことをいいます。

代表取締役は、取締役の中から選ばれるものです。

代表取締役を解任すると、解任された代表取締役は代表取締役ではなくなります。

しかし、取締役までも辞めさせられるわけではありません。

「代表取締役の解任」は、あくまで「代表取締役」だけを辞めさせる手続です。

したがって、代表取締役を解任された人は、取締役としてはそのまま残ります。

同じ人をさらに取締役からも辞めさせるときは、上記で説明した「取締役の解任」を行う必要があります。

なお、「代表取締役の解任」は、法律用語では「代表取締役の解職」といいます。

 

取締役会非設置会社での代表取締役の選び方

まず、取締役会非設置会社での代表取締役の選び方について、解説していきます。

取締役会非設置会社では、取締役の中から代表取締役を選ぶ方法が3種類あります。

どの方法で代表取締役を選んだかによって、代表取締役の解任の方法が違いますので、代表取締役の解任をする前に、まずはどの方法で代表取締役を選んでいるかを確認する必要があります。

代表取締役を選ぶ方法として、次の3つがあります(会社法349条3項)。

  1. ① 定款で代表取締役を定める方法
  2. ② 定款の中に取締役どうしで互選を行う方法を定めておき、その方法にしたがって互選で代表取締役を選ぶ方法
  3. ③ 株主総会の決議で選ぶ方法

参考:会社法|電子政府の窓口

取締役会非設置会社の代表取締役について、詳しい解説は以下をご覧ください。

あわせて読みたい
代表取締役について

 

取締役会非設置会社の代表取締役の解任の方法-選んだ方法によって異なる!

取締役会非設置会社では、代表取締役を選んだ方法によって、代表取締役の解任の方法が異なります。

代表取締役を定款で定めている場合

代表取締役を定款で定めている場合、その代表取締役を解任するためには、定款そのものを変更しなければなりません。

このような場合、会社の定款には、「当会社の代表取締役は〇〇とする」のような条項が入っているはずです。

この代表取締役を解任するには、定款からこの条項を削除する必要があります。

定款からの条項の削除は、会社法のルールにしたがって「定款変更の手続」をすることで行います。

定款変更の手続は、株主総会を招集し、その株主総会で特別決議をすることが必要です。

「特別決議」とは、成立に株主の3分の2以上の賛成が必要となる、普通の決議よりも成立の難しい決議のことです。

 

定款の中に取締役どうしで互選を行う方法を定めておき、その方法にしたがって互選で代表取締役を選んだ場合

取締役による互選で代表取締役を選んだときは、代表取締役の解任は、取締役の過半数による多数決によって代表取締役の解任を行います。

 

株主総会で代表取締役を選んだ場合

株主総会の決議で代表取締役を選んだときは、代表取締役の解任は、株主総会の決議で行います。

この場合の株主総会決議は、特別決議ではなく、普通の決議でかまいません。

代表取締役解任方法のまとめ
  • 選任方法
  • 解任方法
  • 定款
  • 定款の変更が必要
  • 互選
  • 取締役の過半数の決議
  • 株主総会
  • 株主総会の決議

このように、取締役会非設置会社では、代表取締役を選ぶ方法が3種類あり、代表取締役の解任は、代表取締役を選んだ方法によって異なります。

代表取締役を選ぶ方法

いずれの方法も、取締役会の代表取締役の解任は、代表取締役を選んだ方法と同じ方法で行う、という基本的な考え方に基づいています。

もし、代表取締役の解任の方法について迷ったときは、会社法に詳しい弁護士にアドバイスを求めるとよいでしょう。

 

登記申請と解任通知の発送

代表取締役を解任した場合も、登記申請が必要になります。

また、解任した代表取締役に対して解任通知を送っておくと、後々のトラブル防止に役立つことがあります。

代表取締役の解任の登記申請や解任通知については、以下もご覧ください。

あわせて読みたい
取締役の解任を登記する
あわせて読みたい
解任通知とは

 

 

まとめ

以上のとおり、この記事では、取締役会非設置会社における取締役の解任・代表取締役の解任について解説してきました。

最後に、ポイントをまとめたいと思います。

取締役会非設置会社の取締役の解任のポイント
  • 「取締役の解任」とは、会社が取締役を辞めさせること
  • 「取締役会非設置会社」とは、取締役を持っていない会社のこと
  • 取締役会非設置会社での取締役の解任は、取締役会設置会社の場合と異なっている
  • 取締役の解任には、株主総会を開催して取締役の解任の決議が必要
  • 取締役の解任の手続は、会社法のルールにしたがって慎重に
  • 取締役会非設置会社だけに適用される特別ルールを活用しよう
  • 無事に決議が成立したら、すぐに登記申請を
  • 解任した取締役には解任通知を出しておく
  • 「解任」だけでなく辞任や退任も検討しよう。迷ったら弁護士に相談を

 

取締役会非設置会社の代表取締役の解任のポイント
  • 「代表取締役の解任」とは、代表取締役を普通の取締役に戻すこと
  • 「代表取締役」とは、取締役の中から選ばれた特別な取締役のこと
  • 取締役会非設置会社では、代表取締役を選ぶ方法が3種類ある
  • 代表取締役の解任は、代表取締役を選んだときの方法によって異なっている
  • 代表取締役を解任した時も、すぐに登記申請を
  • 解任した代表取締役には解任通知を出しておく

以上、この記事が企業の皆様のお役に立てれば幸いです。

 

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