支払督促とは、金銭などを相手方が支払わない場合に、これを支払わせるための簡易裁判所を利用した手続きのことです。
支払督促によって債権者は権利を実現できる反面、債務者の側から見ると、裁判所によって金銭などの支払いを強制されることを意味します。
この記事では、支払督促について、定義や制度の仕組み、メリット・デメリットや利用方法などについて解説します。
支払督促の申し立てをお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
支払督促とは
支払督促(しはらいとくそく)とは、金銭などを相手方が支払わない場合に、これを支払わせるための簡易裁判所による手続きを指します(民事訴訟法382条以下)。
言葉の語感として、単に相手方に支払いを求める行為一般(支払いを督促すること)をいうと誤解されることもありますが、「支払督促」といったときには、債権回収のための特定の法的な手続きないし制度を指すことになります。
なお、債権を回収する必要があるということは、裏を返せば、債務が不履行の状態にあるということです。
債務不履行についての解説は、こちらをご覧ください。
参考:支払督促|裁判所
支払督促の特徴
支払督促とはどのような手続きであるか、まずは特徴に沿って制度の概要をご説明します。
債権者の申立てによって開始
支払督促は、債権者が簡易裁判所の書記官に対して申し立てることによって開始します(支払督促の申立て 第三百八十三条)。
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
書面審査のみで書記官が判断
支払督促の申立てがあると、裁判所の書記官がこれを審査し、支払督促を発するかどうかを判断します。
判断するのは裁判官ではなく裁判所の書記官ですので、通常の裁判とは異なり証拠調べ(証拠を確認する手続のことです。)は行われません。
債権者の申立てを元に、もっぱら形式審査によって支払督促を行うかが判断されます(支払督促の発付等 第三百八十六条)。
異議が申し立てられると民事訴訟に移行
支払督促は債権者の一方的な言い分を元に発せられているため、債務者にとって受け入れがたい、あるいは反論があるといったことも想定されます。
そこで支払督促が発せられた場合、相手方の債務者は2週間以内に異議を申し立てることができます(支払督促の発付等 第三百八十六条)。
債務者から異議が申し立てられると、支払督促の手続はそこで終了となり、通常の民事訴訟に移行します。
つまり、支払督促を申し立てた人が、相手方に対して訴えを提起したのと同じ状態になり、民事裁判が開始するということです(督促異議の申立てによる訴訟への移行 第三百九十五条)。
異議が申し立てられなければ、仮執行宣言へ移行
一方、相手方が2週間以内に異議を申し立てなければ、債権者は仮執行宣言を申し立てることができるようになります。
仮執行宣言を申し立てると、書記官は仮執行宣言付きの支払督促を債務者に送達します。
仮執行宣言(かりしっこうせんげん)とは、「強制執行します」ということを仮に宣言しているものです。
これに対しても債務者は異議を申し立てることができ、異議が申し立てられれば、同じく民事訴訟へと移行します。
他方で、仮執行宣言付きの支払督促に対しても異議が申し立てられなければ、法的には裁判を起こして勝訴判決を得たのと同じ扱いとなり、相手方の財産に対して強制執行をかけることができるようになります。
督促状との違い
支払督促とは別に、実務では「督促状(とくそくじょう)」というものを送付することがあります。
支払督促が裁判所を通じた正式な法的手続きであるのに対して、督促状は「支払い期限が過ぎているので速やかに支払ってください」という趣旨の単なる「手紙」にすぎません。
督促状を送付したとしても、異議の申立によって訴訟に移行するとか、逆に異議を申し立てないことによって強制執行できるとかいった効力は一切なく、単に債務を支払うように促すためのものにとどまります。
あくまで「手紙」ですので自社で作成してもかまいませんが、実務上は代理人弁護士名で発出することも多くなっています。
督促状はただでさえ法的な効力がなく、相手方の任意の支払いを促すものに過ぎないため、弁護士名で発出することにより、少しでもプレッシャーを与えられた方がより効果的と言えるのです。
位置づけ | 効果 | |
---|---|---|
支払督促 | 法的な根拠のある手続き |
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督促状 | 法的根拠のない手紙 |
|
督促状についての詳しい解説は、こちらをご覧ください。
債権者からの督促状が届いた際の対応について、「法的な効力がないから無視しておけばよい」といった言説が、インターネット上などでしばしば見受けられます。
督促状に法的な効力がないというのはそのとおりではありますが、だからといって、対応せずに無視することはおすすめできません。
督促状の文面には、「上記の期日までに支払いなき場合、法的手続に移行します」といった文言が含まれることが多いですが、これは単なる脅し文句とは言い切れません。
督促状に法的な効力がないからこそ、これを無視されてしまうと、債権者としては次の段階として、より実効性のある手段へと訴えざるを得なくなるのです。
支払い困難な場合や、相手方の請求に理由がないと考えている場合など、無視してしまいたくなる事情はさまざまあろうかと思います。
しかし、督促状は請求者側の認識を示したものですので、きちんと言い分を読み解くことで、どのように対応していけばよいのか、解決の糸口が見えてくることがあります。
もし督促状を受け取ったときは、放置せずに弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。
支払督促をするための条件
支払督促は、簡単な手続きで債権を回収できる可能性がある制度ですが、利用するに当たっては、下記のように条件があります。
金銭等の給付に限る
支払督促は債権を実現するための手段のひとつですが、「支払」と題されているとおり、金銭や有価証券(小切手など)、または代替物の給付を目的とする場合に限って利用できます。
第三百八十二条 金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
代替物とは、同種のものが市場にいくらでもあって、数量さえ指定すれば債務の対象が特定できるものをいい、「米100キログラムを引き渡せ」といった請求がこれに当たります。
支払督促が書面審査だけの簡易的な手続きであることから、対象と数量だけ指定すればそれで債務の内容が確定できるような、シンプルな請求の場合にのみ利用できるということです。
なお、支払督促できる金額に上限はなく、「請求がいくら以内でないと支払督促は利用できない」といった制限はありません。
債務者が日本国内にいて居場所が知れていること
支払督促は、債務者が日本国内にいて、かつ所在が明らかになっていることが利用の条件となります。
民事訴訟法382条中の、「日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る」という箇所が、これを表しています。
「公示送達」とは、相手方が所在不明である場合に、公示、すなわち裁判所の掲示板に掲示することで、通知などを送達したものとみなす制度をいいます。
通常の人は裁判所の掲示板を確認することはしないため、実際に送達されているわけではないのですが、「所在不明で郵便が送達できないから手続きが前に進まない」という事態を回避するため、公示によって送達があったものと扱うことができる場合があるのです。
ただし、申立て側の言い分だけで債権を確定させる効果のある支払督促において、送達すら公示によって済ませることを認めると、債務者は異議を申し立てる機会が一切ないまま強制執行を受けることになってしまいます。
そこで債務者の異議申立ての機会を保障するため、支払督促においては、「日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合」、すなわち相手方の所在が判明しており、支払督促を正しく送達できる場合に限って利用できるものとされているのです。
請求に理由がありそうにみえること
最後は、申立人の請求に理由がありそうにみえることです。
厳密には、「請求に理由がないことが明らかなとき」には、支払督促の申立が却下されるということになっています。
第三百八十五条 支払督促の申立てが(略)申立ての趣旨から請求に理由がないことが明らかなときは、その申立てを却下しなければならない。(略)
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
およそ法的に成立し得ない主張を申し立てたような場合がこれに当たると考えられますが、弁護士に依頼するなどして支払督促を申し立てれば、この要件に引っかかることは基本的にはないと考えられます。
支払督促のメリット・デメリット
支払督促は、簡易迅速な債権回収の手段ではありますが、利点ばかりではありません。
支払督促には特有のデメリットもありますので、メリットと比較しながら選択していく必要があります。
概要を簡単に整理すると、次のようになります。
メリット | デメリット |
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支払督促のメリット
手続きが簡易かつ迅速である
支払督促は訴訟ではありませんので、訴状を作成する必要がなく、簡単な申立書等の提出によって行うことができます。
また、明らかに理由がないと認められる場合以外は支払督促が発せられますので、裁判のように権利の存在を証拠によって立証する必要がありません。
このように、支払督促の手続きは訴訟と比較してかなり簡易的なものになっています。
また、支払督促は書面審査だけで判断されますので、裁判のように期日が開かれることもなく、2週間の間に相手から異議が出なければ仮執行宣言の手続きへと進むことができます。
事件によって期間にかなりの幅はあるものの、通常の民事裁判であればどれだけ短くても半年から1年程度を要することがほとんどです。
訴訟手続きと比較してみると、支払督促は迅速性の点からも優れた制度と言えるのです。
確定すれば勝訴判決と同等の効力が発生する
以上のように、支払督促は訴訟と比べて簡易的な手続きであるにもかかわらず、最終的に確定すれば、裁判をして勝訴判決を得たのと同等の効力を生じます。
第三百九十六条 仮執行の宣言を付した支払督促に対し督促異議の申立てがないとき、又は督促異議の申立てを却下する決定が確定したときは、支払督促は、確定判決と同一の効力を有する。
引用元:民事訴訟法|電子政府の総合窓口
支払督促は手続きが簡易的になっているものの、それと引き換えに効力の面で不十分ということはありません。
このように、効果の面で妥協する必要がない点も、支払督促の大きなメリットです。
費用が比較的安価
訴訟などの法的手続きを裁判所に申し立てるときには、所定の費用がかかりますが、支払督促については、民事訴訟を提起する場合と比較して半額で済みます。
異議申し立てにより訴訟に移行すると残りの半額を納めることにはなりますが、当初の段階での費用が抑えられるのは支払督促のメリットといえます。
支払督促のデメリット
金銭等の給付を求める場合に限られる
支払督促の利用条件の項目でご説明したとおり、支払督促は、金銭の支払い等を求める場合に限って利用できます。
支払督促は書記官が書面審査だけで判断するため簡易迅速である反面、請求内容が複雑なものについては対応できないのです。
支払督促に異議を申し立てられたら訴訟へ移行
支払督促の大きなデメリットは、債務者から異議が申し立てられると、そのまま民事訴訟へと移行することです。
せっかく訴訟よりも簡易的な手続きだと思って支払督促を選択したのに、結局訴訟に移行したのでは、あてが外れたということになります。
支払督促は書面審査だから証拠が不要という点についても、異議によって訴訟に移行する可能性を視野に入れると、手元に何らの証拠もない状態で申し立てるのは非常に危険といえます。
支払督促に対して異議を申し立てるのは相手方の権利であり、特段の理由がなくとも異議を申し立てることができます。
これが裁判の場であれば、相手の請求を退けるためには、法的に意味のある反論をする必要があります。
たとえば、パソコンの販売代金の支払いを請求する訴訟でいえば、「納品されたパソコンは壊れていたから、故障していないものが納品されるまで代金は払わない」といったような、筋の通った反論が求められます。
一方、支払督促に対する異議にそのような制限はなく、とにかく異議がある旨を表明しさえすれば、それで異議として成立するのです。
相手方にしてみれば、異議を出さなければ敗訴したのと同じことになるわけですから、「とりあえず異議を申し立てる」という対応となるケースも多いです。
簡易迅速な解決を期待して支払督促を申し立てたにもかかわらず、結局民事訴訟に移行したのでは、最初から訴訟を選択した場合よりもかえって時間を要することになります。
支払督促が民事訴訟に移行するケースは決して稀とはいえませんので、支払督促を申し立てるときは、相手方から異議が出ることも想定しつつ、民事訴訟を提起するつもりで臨む必要があるといえます。
移行した訴訟は相手方の管轄で
支払督促は、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てるため、異議申し立てにより訴訟に移行した場合、引き続き相手の管轄地の裁判所で裁判することになります。
金銭の請求では、請求する債権者の側の住所地に管轄があることも多いです。
そのため、はじめから訴訟を提起していればこちらの管轄で行えた裁判であっても、支払督促を選択したばかりに、相手の管轄で裁判を進めなければならないことになりかねないのです。
相手方の所在地がこちらに近接していれば問題はありませんが、遠方での訴訟に対応しなければならない可能性がある点は、支払督促のデメリットのひとつです。
支払督促の流れ
支払督促の手続きは、前半の支払督促と後半の仮執行宣言の手続きに分けて考えることができます。
前半の支払督促手続きによって権利の存在を明らかにして、明らかになった権利を後半の仮執行宣言の手続きで実現させるという流れです。
まず仮執行宣言のない支払督促を発出し、相手方から異議が出なければ仮執行宣言を付した支払督促を発するという「2周」の構造になっていることをご確認ください。
支払督促の方法
支払督促のおおまかな流れはつかんでいただけたでしょうか。
支払督促の手続きは、簡易裁判所に対して申し立てることによって開始します。
ここからは、実際に支払督促を申し立てる方法について解説します。
支払督促の申立ては、申立書その他の必要書類を、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に提出して行います。
必要書類等
支払督促をするに当たって必要となる書類等は、次のとおりです。
- 支払督促の申立書
- 申立手数料相当の収入印紙
- 郵便切手
- 登記事項証明書(申立人が法人の場合)
提出先(管轄)
裁判所は全国各地に存在しており、それぞれが決められた区域を管轄しています。
支払督促を申し立てる場合、書類の提出先は「相手方の住所地を管轄する簡易裁判所」になります。
すなわち、まず相手方の住所地を確認した上で、その住所地を管轄する簡易裁判所を特定する必要があるのです。
管轄については、こちらでご確認ください。
参考:裁判所の管轄区域|裁判所
提出方法
申立書等の必要書類がすべてそろい、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所を特定したら、これをその簡易裁判所に提出します。
提出は、直接持参するほか、郵送やオンラインでの提出も可能となっています。
オンラインで提出する場合は、裁判所の「督促手続オンラインシステム」を利用します。
支払督促申立書のサンプル
支払督促の申し立ては、「支払督促申立書」に、「当事者目録」と「請求の趣旨及び原因」を別紙として添付したものを提出して行います。
支払督促の費用
実費費用
支払督促を申し立てるには、申立ての手数料がかかります。
メリットのところでご説明したとおり、支払督促の手数料は、通常の民事訴訟に比べれば半額となります。
たとえば、100万円を請求する場合、民事訴訟であれば手数料は10,000円ですが、支払督促では5,000円となります。
実際に納める手数料は請求金額によって変わってきますので、こちらでご確認ください。
参考:裁判所ホームページ
また、支払督促の郵送等に使用するための郵便切手を、合わせて提出する必要があります。
納付額は相手方の人数によって変動しますが、相手方が1人であればおおむね1,000円強の切手が必要となります。
弁護士費用
支払督促を弁護士に依頼した場合、弁護士費用も発生します。
弁護士費用は依頼する弁護士や請求する金額によっても変わってくるため一概には言えませんが、請求金額が極端に高額な場合を除けば、通常は高くても数十万円程度の範囲に収まると考えられます。
また、法律事務所によっては、初回の相談については無料で対応している事務所も存在します。
支払督促は簡易的な手続きとはいえ、訴訟に移行する可能性もある手続きですから、費用面も含めて、まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。
支払督促などの債権回収のポイント
債権の回収方法は、支払督促以外にもいくつか考えられます。
それらの手段は、どれか特定の手段が優れているといった優劣の関係にあるというよりは、状況に応じて最適な手段を見極めて選択していくといった考え方になります。
そこで以下では、債権回収においてどのような点に気をつければいいのか、ポイントについてご説明します。
まずは交渉を試みる
交渉は、当事者同士の話し合いによって債権の回収を図るものです。
交渉の場合、最終的には相手方の自発的な支払いを待つしかないため、効果の面では法的な手段と比べて見劣りします。
しかし交渉で解決すれば、時間的にも金銭的にも負担を最小限にとどめることができ、この点は交渉の大きなメリットといえます。
また、交渉は当事者同士の話し合いですので、相手方の状況に応じて柔軟な解決を図れるという自由度の高さもポイントです。
法的手続きとなると、どうしても「対決姿勢」の様相を呈しますので、債権回収の際のファースト・チョイスとしては、まずは交渉から入るのが良いケースが多いといえそうです。
強制執行を見据えた上で債権回収を試みる
当事者同士の交渉には以上のようなメリットがある反面、相手方のスタンスに依存するところが大きく、支払いの意思が見られない場合に強制力に欠けている点が難点でもあります。
そこで、任意に支払われない場合に備えて、強制執行を見据えつつ対応を進めることが重要になってきます。
相手方の財産に対して強制執行をかけるためには、「債務名義」と呼ばれる法的な根拠が必要となります。
具体的には、民事裁判を起こして勝訴判決を得たり、今回ご紹介した支払督促手続きを完了したりといったことによって債務名義を取得することによって、はじめて強制執行が可能となります。
相手方の協力によってスムーズな支払いを受けられるというケースばかりではありませんので、債権回収の際には、強制執行も見据えて対応していくことが重要となるのです。
支払督促を利用するかの判断ポイント
支払督促についてメリット・デメリットをご紹介しましたが、「結局訴訟とどちらがいいのかよく分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。
以下に支払督促の手続きを選択する際の視点を整理しますので、ひとつの考え方ではありますが、参考になさってください。
支払督促を検討すべきケース | 訴訟手続を検討すべきケース |
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債権回収に強い弁護士に相談する
ここまでご説明してきた手順に従って申し立てれば、支払督促の手続きをご自身で遂行することも不可能ではありません。
しかし、訴訟ほどではないとはいえ、支払督促を申し立てるに当たっては、必要な書式を整えたり、管轄を判断したりといった専門性が求められる場面があります。
特に支払督促には、相手方から異議が申し立てられると手続きが即民事訴訟に移行するという特徴があります。
これらのことを考慮すると、支払督促については債権回収に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
支払督促の段階から弁護士に依頼しておけば、その後異議が申し立てられて訴訟に移行したとしても、引き続き対応をまかせることができます。
弁護士としても、早い段階から訴訟を意識して案件に関与できますので、訴訟に移行した場合の対応が非常にスムーズなものとなります。
また、債権がうまく回収できない事態がしばしば生じるようであれば、弁護士との顧問契約を検討されるとよいでしょう。
法的なトラブルが生じてから弁護士を探し始めたのでは、対応の遅れにつながりかねません。
顧問弁護士がいると、債権回収だけでなく、その他の法律問題についても気軽に相談できます。
顧問弁護士の必要性について、詳しい解説はこちらをご覧ください。
支払督促についてのQ&A
支払督促の2週間の数え方を教えて下さい
相手方が異議を申し立てることのできる「2週間」とは、督促の送達を受けた日の翌日から数えて2週間となります。
「初日不算入の原則」といって、送達を受けた当日は1日に満たない端数として切り捨てのような扱いとなるためです(民法140条)。
支払督促が送達できないときはどうなる?
支払督促が正しく送達できなかった場合、再送達の申請をすることになります。
支払督促では公示送達が使えませんので、休日や就業場所への送達などを試み、それでも送達できなければ、「付郵便送達」によって送達します。
付郵便送達とは書留郵便を利用した送達であり、郵便を発送した時点で、有効な送達があったものと扱われます。
支払督促に異議を申し立てられた後でも、和解の可能性はある?
支払督促に異議を申し立てられた後であっても、和解の可能性はあるといえます。
支払督促に異議を申し立てなければ、相手方は裁判で敗訴したのと同じことになってしまうため、請求を争う場合だけでなく、「請求内容は認めるが支払いの時期だけ相談させてほしい」といった趣旨で異議が申し立てられることもあるのです。
異議によって手続きは訴訟に移行することにはなりますが、必ずしも和解の可能性がなくなるわけではないといえるでしょう。
まとめ
このページでは、支払督促について、その意味やメリット・デメリット、手続きの流れなどを解説しました。
記事の要点を、最後に整理します。
- 支払督促とは、簡易裁判所を利用した債権回収手続きのことである。
- 支払督促の手続きにおいて、督促を受けた相手方が異議を申し立てると、督促手続きは終了して自動的に訴訟へ移行する。
- 支払督促に対して相手方から異議が出ない場合、勝訴判決を得たのと同等の効果となり、相手方の財産に対する強制執行が可能となる。
- 支払督促は、訴訟に比べて費用的にも時間的にも負担が少ないが、異議申し立てによって訴訟に移行すると、かえって負担増となることもある。
- 支払督促は債権回収に強い弁護士に依頼することが効果的であり、弁護士との顧問契約も検討するとよい。