OEM契約とは、Original Equipment Manufacturerの略であり、企業間で行われる特定の製品の製造に関する契約形態です。
OEM契約は、委託者及び受託者双方に利益をもたらす取引形態であり、それぞれの強みを生かして協力することで、市場競争力を高めることができます。
しかし、OEM契約においては、適切な契約書を作成・締結しないと将来的にトラブルを引き起こす可能性があります。
ここでは、企業法務に注力する弁護士がOEM契約の意味、メリットやデメリット、契約締結の流れや注意点などを解説しています。
OEM契約にご関心がある方はぜひ参考になさってください。
OEMとは?
OEM契約とは
OEM契約(Original Equipment Manufacturer)は、企業間で行われる特定の製品の製造に関する契約形態です。
この契約では、特定の企業(委託者)が自社のブランド名を冠した製品の製造を、他の企業(受託者)に委託することが取り決められます。
具体的には、委託者は自社で商品を企画・設計し、その生産工程を受託者に委ねます。
受託者は、提供された仕様に基づいて製品を生産・組み立て、最終的に委託者のブランド名で市場に提供します。
このプロセスにおいて、受託者は製造プロセスや生産施設、技術力を提供する役割を果たします。
OEMが利用される場面
この契約形態は、さまざまな産業で利用されています。
例えば、コンピューター製造業界では、大手ブランドが製品デザインとマーケティングを担当し、実際の製造作業は特定の製造業者に委託することがあります。
これにより、ブランド企業は自社の製品を市場に提供できる一方で、生産ラインの管理や製造スペースの確保などの手間を省くことができます。
また、自動車業界でもOEMは一般的です。
有名自動車メーカーが、エンジンや部品の製造を専門に行う企業に委託することで、製品の生産能力を拡大し、生産効率を向上させることが可能です。
このような形態は、製造業の多様な分野で見られ、製品のブランド力や技術力を最大限に生かすことができます。
OEMは相互に利益をもたらす取引形態であり、委託者と受託者がそれぞれの強みを生かして協力することで、市場競争力を高めることができます。
OEMとライセンス契約との違い
OEM契約とライセンス契約は、自社製品を他社に関与させる形態である点で共通していますが、その具体的な契約内容や立場においていくつかの重要な違いがあります。
OEM契約は、製造業務の一部を他社に委託する形態です。
委託者は自社ブランドの製品を受託者に製造させ、販売は自社で行います。
この契約では、主に委託者が製造業者に対して製造料金や委託料を支払います。
製造業者は「下請」として、受託者の立場にあります。
OEM契約は、製造プロセスの効率化や特定の技術を持つ企業の専門性を活用するために利用されます。
一方で、ライセンス契約は、製造と販売の権利を他社に許諾する形態です。
ライセンサーは製品の技術やブランド力を提供し、ライセンシーはそれを使用して製品を製造し、自社で販売します。
契約の主導権は通常ライセンサーにあり、ライセンシーは提供された権利を利用することで、自社の事業を拡大します。
ライセンス契約では、ライセンシーがライセンサーに対してライセンス料を支払います。
これは、提供された権利や技術の使用に対する対価となります。
要するに、OEM契約は主に製造に焦点を当て、販売は委託者が行います。
一方、ライセンス契約は製造と販売の両方に関与し、ライセンサーが技術やブランドを提供し、ライセンシーがそれを使用する代わりにライセンス料を支払います。
契約の主体や内容において、これらの2つの形態は異なるビジネスモデルを反映しています。
OEMのメリットとデメリット
委託者側について
委託者のOEMの3つのメリット
OEM契約におい、委託側(委託者)にはいくつかのメリットが存在します。
委託者は自社での製造ラインを確保するために設備投資を行う代わりに、受託者に委託料を支払い、製品の生産を外部に委託します。
この方法により、自社での設備投資や運営にかかるコストを抑制できます。
特に、生産規模が大きくなるほど、外部委託が経済的であることが多いです。
委託者は自社の製造ラインに加えて、受託者の製造ラインを活用することで、迅速に生産能力を確保・拡大できます。
これにより、需要の急増や大量生産にも柔軟かつ迅速に対応できるため、市場の変動に適応しやすくなります。
委託者が外部の製造ラインを利用することで、自社の人員を製造業務に一部集中させる必要がなくなります。
これにより、自社の他の部門や業務に人員を振り分けることが可能となります。
例えば、新製品の開発や販路開拓といった戦略的な業務に人材を充てることができ、企業全体の総合的な競争力向上に寄与します。
これらのメリットにより、OEM契約は企業が生産や事業展開において柔軟性を持ち、リソースを最適に活用する手段として広く利用されています。
委託者のOEMの3つのデメリット
OEM契約には委託者(委託側)にとっていくつかのデメリットが存在します。
委託先が他社であるため、製造ラインを十分に監視・監督することが難しいです。
品質管理やプロセスの透明性が低下し、生産プロセスにおける問題や変更が十分に把握しづらくなります。これが、製品の品質や仕様に影響を与える可能性があります。
委託者は外部の製造プロセスに依存しているため、製造ラインの監視が不十分な場合、納期遅れや品質不良が発生するリスクが高まります。
これは市場での信頼性低下や損害の原因となります。
長期的には、自社の製造ラインを外部に委託することが、自社の製造技術の低下につながる可能性があります。
自社の従業員が製造プロセスから離れ、ノウハウが外部に流出することで、企業の製造技術力が低下するおそれがあります。
これらのデメリットは、委託者がOEM契約を検討する際にリスクとして考慮するべき要因です。
従って、契約時には慎重な検討と十分な法的な取り決めが必要です。
受託者側について
受託者のOEMの2つのメリット
受託側にとってのOEM契約のメリットはいくつか存在します。
OEM契約により、大口の発注を確保できるため、安定した収益を得ることができます。
例えば、自動車メーカーがエンジンを他社にOEM委託する場合、数年にわたって一定量のエンジンを受託し、安定的な収益源を確保します。
これにより、生産ラインの効率化や生産計画の安定に寄与します。
OEM契約においては、委託者が持つ製造ノウハウや技術を受託側が学ぶ機会があります。
例えば、高度な製造技術や品質管理のノウハウを提供された場合、これにより受託側の技術力が向上します。
ただし、情報の取り扱いには慎重を要し、秘密保持契約が必要です。
これらのメリットにより、受託側は市場での競争力を高め、企業の成長や技術力向上に寄与することが期待されます。ただし、慎重な契約交渉や法的な取り決めが必要です。
受託者のOEMの2つのデメリット
受託側から見たOEM契約のデメリットには以下の点が挙げられます。
OEM契約において、受託者は委託者のブランド製品を製造しますが、これを自社のブランドとして販売することはできません。
例えば、スマートフォンメーカーが特定の部品(例:カメラモジュール)を他社にOEM委託した場合、その部品を使用したスマートフォンは、委託者のブランドで販売されます。
OEM契約では、通常、委託者が発注量や製品仕様をコントロールする立場にあります。
これにより、受託者は委託者に依存し、売上の大部分が委託者に依存することがあります。
例えば、自動車部品メーカーがエアバッグをOEM供給している場合、エアバッグの需要が委託者に大きく左右され、競争力の向上や独自性の確立が難しくなります。
これらのデメリットから、受託者は戦略的な検討やリスク管理が必要であり、将来的な
自社製品のブランド展開や市場進出戦略を検討する必要があります。
OEMの締結の流れ
OEM契約の締結は、以下の一般的な流れに基づいています。
委託者は、自社が製造を委託する製品や部品のニーズを特定します。
これは市場調査や自社の製造能力、財務状況などを考慮した上で行われます。
例えば、スマートフォンメーカーが特定のコンポーネントを製造するために供給業者を検討する場合、需要の予測や品質要件などがこの段階で明確化されます。
委託者は、製造を行うための最適な受託者を選定します。
この際には製造能力、品質管理の実績、価格競争力、納期遵守などが考慮されます。
複数の候補がある場合、入札プロセスが行われることもあります。
選定された受託者と委託者は、契約条件について交渉を行います。
これには製品の仕様、価格、納期、品質基準、機密情報の取り扱いなどが含まれます。
双方の合意が得られるまで何度かの交渉が行われることがあります。
交渉が終了すると、契約書が作成されます。
契約書には双方の権利・義務、製品の仕様、価格、支払い条件、機密情報の取り決め、契約期間などが明記されます。
法的なアドバイスを受けながら、両者が同意できる形に合意されます。
両者は法的な観点から契約書を審査し、法的な拘束力を確認します。
各当事者が法的なアドバイスを求めることもあります。
最終的な合意が得られたら、契約書に署名し、契約が締結されます。
これにより、委託者と受託者の間で製造に関する取り決めが正式に行われ、製造が開始されることとなります。
OEMの注意点
OEM契約を検討する際には、以下のいくつかの重要な注意点があります。
契約書の明確さ
契約書は製造に関する重要な事項を含んでいます。
製品の仕様、品質基準、価格、納期、機密情報の取り扱いなどが明確に規定されるべきです。
契約書の不備や曖昧さは、将来的なトラブルの原因となり得ます。
法的なアドバイスを受けつつ、契約書を十分に検討することが重要です。
品質管理と監視体制
製品の品質はブランド価値に直結します。
受託者の品質管理体制や品質保証の仕組みが重要です。
また、製造ラインの監視体制が確立されているかどうかも注視するべきです。
品質が確保されない場合、委託者の評判や責任が問われる可能性があります。
機密情報の取り決め
OEM契約では、製造に関連する機密情報が共有されることがあります。
契約書には機密情報の定義、取り扱い方法、機密保持期間などが厳密に明示されるべきです。
機密情報漏洩が企業に深刻な損害を与える可能性があるため、慎重に取り扱う必要があります。
変更管理プロセス
製品仕様や製造プロセスに変更が生じた場合、それに関する適切な変更管理プロセスが必要です。
変更が適切に管理されないと、製品の品質や満足度に影響を与える可能性があります。
リスク管理
潜在的なリスク(例:供給不足、自然災害、法規制変更など)に対するリスク管理策が必要です。
契約書にはこれらの事態に対処するための取り決めが含まれているべきです。
法的助言の活用
契約締結前に法的な助言を受けることは非常に重要です。
特に国際的な契約や複雑な取引の場合、異なる法的慣習や法規制に対する理解が求められます。
企業法務に詳しい弁護士へ相談する
OEM契約は、委託者側、受託者側の双方にとって重要な契約となります。
後々のトラブルを回避するために、OEM契約に精通した弁護士に相談し、契約内容等についての助言をもらうことをお勧めいたします。
これらの注意点を考慮することで、OEM契約において双方にとって有益でリスクの少ない取引が可能となります。
OEM契約書に盛り込むべき内容
OEM契約において、製品の仕様についての具体的な内容を明確に定義することが重要です。
以下は、製品の仕様に関する最低限盛り込むべきポイントです。
(1) サイズ(+許容される誤差の範囲)
製品の寸法やサイズを具体的に記載し、誤差の範囲を定めることで、一貫性を保ちつつ適切なバリエーションを認めます。
(2) 部材
使用する素材や部材の品質基準を示し、製品の性能や耐久性を確保します。これにより、一貫性のある高品質な製品を期待できます。
(3) 製造方法
製品の生産プロセスや製造方法を具体的に明記し、品質管理や製造効率の確保に寄与します。これは製品の一貫性やブランド価値の維持に寄与します。
(4) 商標(ロゴなど)の表示方法
商標やロゴの表示方法や位置を詳細に規定し、ブランドイメージの一貫性を確保します。これにより、顧客は一貫性のある製品を期待できます。
これらの仕様は、OEM契約書に添付される仕様書を通じて徹底的に明確化され、双方の合意が確認されることで、品質やブランド価値を守りつつ円滑な製造プロセスを実現します。
OEM契約において、最低発注量は重要な条項の一つです。
最低発注量の設定により、受託者は安定的な仕事量を確保し、製造ラインの適切な稼働を保つことができます。
以下は最低発注量に関する要点です。
(1) 基準となる期間
契約で基準となる期間を具体的に定めます。例えば、年単位や契約期間全体を通しての
期間が考えられます。
この期間が発注の基準となります。
(2) 期間中の最低発注量
同じく契約で、基準期間中における最低発注量を具体的に明示します。
これは受託者が保障しなければならない最低限の発注数量であり、安定的な生産を確保する役割を果たします。
このように最低発注量を契約に明示することで、委託者と受託者との安定的な取引が促進され、予測可能な製造環境が築かれます。
製品の納期を具体的に規定することで、製造スケジュールの遵守が期待できます。
(1) 納期の通知
受注後、受託者は納期をI週間以内に確認および通知し、その後の生産および配送スケジュールを策定する。
(2)納期の変更
予期せぬ事態が発生した場合、変更が必要な場合は双方の合意のもとで納期の変更が行われる。
契約不適合責任はOEM契約において極めて重要なポイントであり、潜在的な製品の問題に対処するための具体的な規定が必要です。
以下に、契約不適合責任に関連するポイントと具体的な例を示します。
(1) 契約不適合責任の追及手段
OEM契約において、契約不適合責任を追及するための手段を明確に規定することが不可欠です。
以下は主な追及手段です。
履行の追完請求(民法562条): 不適合な製品について、委託者はその補修や修正を受託者に請求できる。例えば、不具合が発生した場合、受託者による履行の追完が求められる。
代金減額請求(民法563条): 不適合な製品により委託者が受ける不利益に対して、代金の減額を請求できる。例えば、不備が生じた場合には、委託者は支払った委託料から一定額を差し引くことを求めることができる。
損害賠償請求(民法564条、415条1項): 不適合な製品によって生じた損害に対して、賠償請求が可能。例えば、不良品が市場に流通してしまった場合、委託者はその損失を受託者に請求できる。
OEM契約の解除(民法564条、541条、542条): 契約不適合が深刻で、解決が難しい場合、委託者は契約を解除することができる。例えば、製品の品質が基準を著しく下回り、再発防止が困難な場合に適用される。
(2) 責任期間と任意規定
契約不適合責任の責任期間は通常1年以内とされていますが、これは基本的な期間であり、OEM契約では変更が可能です。
契約書において、契約不適合責任の責任期間を特約によって変更できるようにすることが重要です。
この特約によって、例えば重要な製品の場合は2年間に延長することができます。
(3) 任意規定とは?
「任意規定」とは、契約の当事者間で合意に基づき変更可能な規定のことです。
契約不適合責任において、例えば特定の製品については1年以上の責任期間を規定する場合や、特定の状況で責任を免除する場合に任意規定が使用されます。
OEM契約において、製品検査に関する重要な事項を明示することが不可欠です。
以下に、具体的かつ分かりやすく説明いたします。
(1) 検査期間の定義
委託者は受託者からの製品を受け取った後、検査を行います。
OEM契約では、この検査にかかる期間を定めます。
例えば、「納品後10営業日以内に検査を完了する」といった具体的な期間を契約書に明記します。
(2) 補修・修正の上限回数
委託者は、検査により不備や欠陥が発見された場合、補修や修正を受託者に要求できます。
契約書では、この補修や修正の回数に上限を設けます。
例えば、「同一欠陥に対する補修・修正回数は2回までとする」といった規定を盛り込みます。
(3) 検査結果の通知方法
受託者は検査の結果について迅速に通知されるべきです。
OEM契約では、検査結果を委託者に通知する手段や期限を規定します。
例えば、「検査結果は電子メールにて納品後3営業日以内に通知する」といった具体的な取り決めが重要です。
これらの検査に関するルールの適切な明記は、品質管理を確保し、製品の信頼性を向上させると同時に、委託者と受託者のコミュニケーションを円滑に進めるために欠かせないものです。
OEM契約において、委託料に関する具体的な規定は契約の透明性と円滑な取引を確保するために重要です。
(1) 委託料の金額や計算方法
明確かつ具体的な金額や計算方法を契約書に明示することで、双方の期待値を合わせ、将来の紛争を防ぎます。
例えば、製品ごとの単価や数量に基づいて金額を設定する方法が一般的です。
(2) 委託料の支払時期
委託料の支払時期を定め、発注や納品のタイミングに合わせたスケジュールを作成します。
これにより、資金の流れが円滑に行われ、両当事者の経済的な調整が容易になります。
(3) 委託料の支払方法
支払方法に関するルールを契約書に盛り込みます。
通常、銀行振込や小切手などの方法が利用されます。
明確な支払手段により、双方が合意しやすくなり、取引の透明性が向上します。
(4) 個別の発注書等による規定
継続的な発注が予定される場合、契約書本体には基本的な枠組みを設け、具体的な発注ごとに詳細な条件を記載した発注書を使用する方法も有効です。
これにより、柔軟性を確保しつつ、具体的な発注に関する詳細を柔軟に調整できます。
製造物責任は、製品の欠陥により人の生命・身体・財産に損害が発生した場合に発生する法的責任です。
OEM契約では、製造を担当する受託者と委託者がこの責任を負います。
(1) クレーム対応手順の明確化
クレームが発生した場合、どちらが主導してクレーム対応を行うかを定めます。
例えば、受託者が直接製造に関与した場合、受託者が主体的にクレーム対応を行うことを契約に記載します。
(2) 損害賠償の明示的な規定
クレームにより生じた損害について、委託者と受託者の責任分担を具体的に規定します。
例えば、製品欠陥が受託者の製造ミスによるものであれば、受託者が損害賠償を負担する旨を契約書に明示します。
(3) 損害賠償金の分担方法
委託者と受託者がどのような基準で損害賠償金を分担するかを具体的に規定します。
例えば、受託者が製造プロセスの品質管理に不備があった場合、それに応じて損害賠償金の分担比率を契約に明記します。
補足: 製造物責任法の具体的な条文は以下の通りです。
- 製造物責任法2条3項1号、3条:製造者(受託者)の製造物責任。
- 製造物責任法2条3項2~3号、3条:他の者の名で販売した者(委託者)の製造物責任。
OEM契約において再委託に関する内容を定めることが重要です。
再委託の可否は、委託者が製造プロセスの監視を難しくする可能性があるため、通常は慎重に検討されます。
原則として、再委託は特段の事情がない限り認められません。
万が一再委託を認める場合でも、再委託先が責任を果たさない場合は、受託者がその損害に対して一切の責任を負うことを契約書に規定することが求められます。
OEM契約の期間は通常、中長期的な製造の安定性を確保するために設定されます。
契約期間が長いほど、受託者にとっては安定した仕事の確保が期待でき、一方で委託者はリスクを軽減できます。
契約期間の長さは交渉の焦点であり、発注単価や取引の安定性を考慮しながら双方が合意します。
期間の設定は一般的には契約の公平性とリスクヘッジのバランスを取り、取引の持続可能性を確保する重要な要素です。
OEM契約においては、委託者と受託者が互いに製造ノウハウや製造ラインの情報を提供するため、重要なのが秘密保持義務の明確な規定です。
以下は具体的なポイントです。
(1) 秘密情報の定義
委託者と受託者が何を秘密情報とみなすかを具体的に定義する。
(2) 開示・漏洩の禁止
秘密情報の原則的な第三者への開示や漏洩を禁じる。情報を厳重に保持するための基本原則。
(3) 開示の例外
特定の条件が整った場合に、例外的に第三者への開示が認められる場合の要件を詳細に規定。機密情報の慎重な管理を保つため。
(4) 目的外利用の禁止
受け取った秘密情報を、元の契約目的以外で利用することを禁止。情報の不正な使用を防ぎます。
(5) 契約終了時の処理
契約終了時には、秘密情報の破棄または返還手順を具体的に規定。情報漏洩のリスクを最小限に抑えます。
(6) 漏洩時の対応
秘密情報が漏洩した場合の対応策を詳細に記載。迅速かつ適切な対処が求められます。
これらの秘密保持義務のポイントを契約書に適切に盛り込むことで、信頼性の高いOEM契約を構築し、双方の機密情報を確実に保護します。
損害賠償規定は、契約当事者が相手方に対して責任を負う損害に関するルールを確立します。
通常は「相当因果関係の範囲内で損害を賠償する」が基本であり、これは民法の原則です。
しかし、具体的な契約交渉により、範囲を拡げたり(「一切の損害を賠償する」)、逆に狭めたり(「直接発生した損害に限り賠償する」)することも可能です。
また、損害賠償の上限を設定することも検討されます。
これらの条件は契約当事者間での合意によって確定し、契約書内に適切に明記されます。
危険負担は、損害が発生した場合、契約当事者どちらも責任がない場合のルールを指します。
現行民法の536条1項により、債務が履行されない場合、債権者は反対給付を拒否できます。
参考:e-GOV法令検索|民法
例えば、OEM契約において受託者が納品を果たさなかった場合、天災地変などの責任外の事由でも、委託者は委託料の支払い義務を負いません。
ただし、契約書において補償を規定することも可能であり、具体的なリスク分析と契約交渉が危険負担のルールを明確にします。
まとめ
以上、OEM契約の意味、メリットやデメリット、契約締結の流れや注意点についてくわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。
OEM契約は信頼と透明性を基盤に成り立つものであり、慎重かつ明確な契約書が不可欠です。
当事者双方の利益を守りつつ、リスクを適切に配分し、円滑な取引を促進するために、契約書の作成には法的アドバイスや業界のベストプラクティスの考慮が必要です。
当事務所の企業法務チームは、OEM契約等の各種契約をサポートしてます。
OEM契約については、当事務所までお気軽にご相談ください。