以前注文があったソフトをユーザーに納入したのですが、テストの際にバグが発見されました。
当該ソフトを開発した当社としては、ユーザーからの指摘には随時対応していたのですが、想定以上にバグが見つかったことを受け、「報酬は支払わないし、契約も解除する」と言ってきています。
報酬は受けられないのでしょうか。
この質問について弁護士がお答えします。
「瑕疵」とは
ご相談のケースを考える前に、まず「瑕疵」について解説します。
「瑕疵」とは、一般的に、「契約で予定されていた品質・性能を欠くこと」と定義されています。
システム開発においては、「システムが、合意した仕様や性能を有していないこと」であり、端的には、完成したシステムと仕様の不一致と捉えられます。
瑕疵がある場合の法的責任
現行法では、瑕疵が軽微な場合は、ユーザーは修補請求権または損害賠償請求権を有します。
一方、瑕疵が重大な場合(=契約の目的を達成できないとき)は解除権を有します。
基本的にプログラムは人の手で組まれるものであるため、一定割合で不具合が生じることは不可避であると考えられています。
そのため、裁判所としては、通常のシステムにはあってはならない不具合かどうかを基準に瑕疵の有無を判断します。
また、操作性や使い勝手といった、いわゆる非機能要件といわれる部分の問題については、各人の完成により異なる部分があるため、「システムの一般的利用者を基準として、使用に耐えられないほど不親切である」か、といった視点から判断されます。
瑕疵担保責任を負わないための対策
ユーザーから不具合の発生について指摘された場合、ベンダーとしては、遅滞なく修補をすること、またはユーザーと協議の上相当と認める代替措置をとることにより、瑕疵担保責任を免れることができる可能性があります。
もっとも、ユーザーの指摘に遅滞なく応じなかった場合はもちろん、修補に多大な時間を要するような場合は、当該不具合は「瑕疵」と評価され、責任を免れないため注意が必要です。
その他、ユーザーによる指図によって予定していたシステムが大幅に変更したにもかかわらず、不具合を指摘されたような場合は、もはやベンダーの責任ではありません(これは民法改正の影響を受けません。)。
そのため、ベンダーとしては、ユーザーからの指示のメール、会議の議事録等を記録するなどして、ユーザーからの指示であることを立証できるよう準備しておくことが有用です。
ご相談のケース
以上から、ご相談のケースでは、ベンダー側として修補を行うなど適切な対応をしたとしても、あまりに多すぎる不具合が発見された場合は瑕疵と評価されるため、報酬の支払いを拒絶されてもやむを得ない可能性があります。
ただし、不具合の部分とは区別できる部分もあり、その限りでユーザーも利益を得ている場合は、報酬の一部を請求できる余地は残ります。
一方、ユーザーの指示によりシステム自体が当初の予定から大幅に変更しているような場合は、なお報酬の全額を請求できる可能性があります。
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