利用規約とは?有効条件や作り方のポイントを解説|テンプレート付

  
監修者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


利用規約とは、アプリなどのサービスの利用にあたって、その利用者が順守すべきルールなどを定めたものです。

今日では、ウェブサービスやアプリの利用規約を目にすることが多いと思います。

利用規約の内容は、サービスを提供する事業者と利用者(ユーザー)との間の契約の一部となるため、利用者(ユーザー)は利用規約を遵守して、サービスを利用する必要があります。

この記事では、利用規約の意義や内容・効力などについて詳しく解説するとともに、サービスを提供する事業者が利用規約を作成し掲載するうえでのポイントについて説明しています。

また、利用者(ユーザー)の立場からも、利用規約に関する注意点についても説明しています。

最後までお読みいただくことで、利用規約に関して知っておくべき事項よく分かると思います。

利用規約とは

利用規約とは、サービスを提供する事業者が利用者(ユーザー)に対して、サービス利用に関するルールなどを定めたものです。

利用規約には、ユーザーがアプリなどのサービスを利用するにあたって守らなければならない内容や、ユーザーおよび事業者の権利・義務などが規定されています。

身近なものとしては、ウェブサービスやアプリの利用規約などが挙げられます。

利用規約と契約書との違い

利用規約は、事業者と利用者との間の契約書の代わりとなるものです。

しかし、利用規約と契約書は、以下のような違いがあります。

利用規約 契約書
不特定多数の利用者向けに、事業者が一方的に作成 当事者間で個別に合意をした内容をもとに作成
署名や押印は不要 署名や押印が必要になることが多い

契約書は、それぞれの当事者の間で個別に交渉し合意をした内容をもとに作成される書面です。

したがって、契約書の場合は、個々の当事者ごとに、個々の具体的な事情によって、異なる内容が定められることとなります。

これに対し、利用規約は、不特定多数の利用者向けに、サービスを提供する事業者が一方的に作成するものです。

ウェブサービスなどにおいては、利用規約について、契約書のように個々のユーザーごとに異なった内容を定めるというのは現実的ではないからです。

そのため、利用規約の場合、すべての当事者が一律に、同じ内容の利用規約に従うこととなります。

 

利用規約と約款との違い

利用規約 約款
  • 不特定多数の人を相手方として、事業者が提供するサービスに関するルールを定めたもの
  • 「定型約款」に該当するものと、該当しないものがある
  • 不特定多数の人を相手方として、定型的な契約内容を定めたもの
  • 「定型約款」については民法上に規定がある

利用規約とよく似たものとして、約款があります。

利用規約も約款も、不特定多数の人を相手方とするという点で共通しています。

利用規約は、事業者が提供するサービスに関するルールを定めたものであるのに対し、約款は、定型的な契約内容を定めたものです。

両者は法律などによる明確な定義があるわけではないため、厳密に区別されているわけではありません。

なお、約款のうち、「定型約款」については、民法上に規定があり、民法で定められたルールに従うこととなります。

また、利用規約の中にはこの「定型約款」に該当するものも多くみられます。

ウェブサービスやアプリの利用規約は、多くの場合、「定型約款」に該当し、民法のルールが適用されます。

 

利用規約が必要となる理由

利用規約は、法律などによって作成することが義務付けられているものではありません。

しかし、利用規約は、サービスの提供や運営を必要最小限の人員や労力で行うために必要不可欠となるものです。

ウェブサービスなどのように、不特定多数のユーザーを対象としてサービスを提供する場合、個々のユーザーごとに個別に契約内容を定めるというのは、非常に大変であり、実際には不可能です。

利用規約を作成することによって、不特定多数のユーザーに対して、同一のルールを一律に適用することが可能となります。

その他にも、利用規約は、ユーザーの禁止行為を防止することや、禁止行為が行われた場合の対応の際に重要となるものでもあります。

利用規約に、ユーザーの禁止行為を具体的に挙げておくことで、禁止行為が行われることを予防することが期待できます。

また、禁止行為を行った場合の措置などを明確に記載しておくことで、禁止行為への対応について苦情が寄せられたりトラブルになったりすることを防ぐことができます。

このように、ウェブサービスやアプリなどのサービスにおいては、利用規約は必須であるといえます。

 

 

利用規約の効力とは

利用規約の効力については、法律などで定められているわけではありません。

しかし、利用規約が「定型約款」に該当する場合には、民法の定型約款に関する規定が適用されます。

具体的には、民法が定めている、

  1. ① 定型約款による契約の効力や有効となる要件
  2. ② 定型約款の変更が認められる要件
  3. ③ 定型約款が無効となる場合に関する規定

が適用されることとなります。

 

利用規約が「定型約款」に該当する要件

以下の2つの要件を満たす利用規約は、「定型約款」に該当し、民法の規定が適用されます(民法548条の2)。

  1. ① 特定の者が不特定多数の者を相手方とする取引であること
  2. ② その取引の内容の全部または一部が画一的であることが、サービスを提供する事業者と利用者の双方にとって合理的であること

ウェブサービスやアプリの利用規約は、この①と②の要件を満たし、民法の「定型約款」に該当するものがほとんどです。

そのため、以下では、利用規約が民法の「定型約款」に該当することを前提として説明します。

 

 

利用規約が有効となる条件

利用規約を作成したとしても、直ちにその利用規約が有効となってユーザーに適用されるわけではありません。

「定型約款」に該当する利用規約が有効となるためには、以下の2つのうちのいずれかを満たすことが必要です(民法548条の2第1項)。

  1. ①利用規約について同意すること(定型約款である利用規約を契約の内容とする旨の合意をしたこと)
  2. ②事業者があらかじめ、利用規約を契約の内容とする旨を表示すること

この①と②のいずれかに該当する場合、ユーザーは、たとえその利用規約の条項の内容を認識していなくても、その内容に合意したものとみなされます。

その結果、利用規約がユーザーに有効に適用されることとなります。

 

利用規約について同意すること

ユーザーから利用規約についての同意が得られれば、その利用規約はユーザーに有効に適用されることとなります。

同意の取得方法としては、例えば、ウェブサイト上に利用規約の全文を掲載して、ページの最下部にある「同意する」旨のボタンをクリックしてもらう、という方法が一般的です。

 

あらかじめ利用規約を契約の内容とする旨を表示すること

事業者がユーザーに対し、あらかじめ利用規約を契約の内容とすることを表示していた場合にも、その利用規約はユーザーに有効に適用されることとなります。

例えば、ウェブサイト上のサービスの利用画面で、「利用規約を契約の内容とすることに同意する」旨のボタンを配置し、クリックしてもらうという方法が一般的です。

この場合、利用規約の内容自体の同意は必要ありません。

ただし、ユーザーが利用規約を明確に認識できる形で表示しておくことが必要です。

 

 

利用規約を変更するための条件

サービスを継続的に提供していると、法令の改正や、経営状況・社会情勢の変化などに伴い、有効に成立した利用規約の内容を事後的に変更する必要が生じることがあります。

この場合、利用規約が有効に適用されるためにユーザーからの同意が必要となるのと同様に、本来であればユーザーから利用規約の変更についての同意を得ることが必要なはずです。

しかし、変更の都度、多数存在するユーザーから同意を得なければならないとすると、事業者にとって非常に手間がかかります。

そのため、定型約款に該当する利用規約は、以下のいずれかに該当する場合、ユーザーの同意を得ることなく、その内容を変更することができます(民法548条の4第1項)。

  1. ①利用規約の変更が、相手方(ユーザー)の一般の利益に適合するとき
  2. ②利用規約の変更が、契約の目的に反せず、かつ、変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき

これらに該当する場合、その変更内容はユーザーにとって有利なものとなることから、同意を得ずに変更することが認められています。

なお、②の「変更に係る事情に照らして合理的なものである」かどうかは、変更の必要性、変更内容の相当性、変更する旨の規定の有無などのさまざまな事情を考慮して判断されます。

 

定型約款を変更する際に必要となる手続き

上記の①または②に該当し、ユーザーの同意を得ることなく利用規約を変更する場合、変更は以下の手続きによって行う必要があります(民法548条の3第2項)。

  • 利用規約の変更の効力発生時期を定めること
  • 以下の事項をインターネットの利用その他適切な方法により周知すること
    ・利用規約を変更する旨
    ・変更後の利用規約の内容
    ・変更後の利用規約の効力発生時期

なお、「利用規約を変更する旨の規定」の例としては、「当社は、当社が必要と認めた場合、この利用規約を変更することができます。」といったものが一般的です。

 

 

利用規約が無効となる場合

利用規約に、ユーザーにあまりにも不利な条件を定めた場合には、以下のように、民法や消費者契約法の規定によってその条項が無効となる場合があります。

ユーザーの権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの(民法548条の2第2項、消費者契約法10条)
例えば、ユーザーの権利を行使できる期間を制限する条項や、ユーザーが有する解除権の行使を制限する条項は、無効となることがあります。

 

事業者の損害賠償責任の全部を免除し、または事業者に損害賠償責任を負うかどうかの決定権を付与する条項(消費者契約法8条1項1号、3号)
例えば、「当社は、ユーザーが本サービスを利用することによって生じる損害について、一切の責任を負いません」というような条項は、無効となります。

 

故意または重大な過失による事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項や、事業者に責任の限度を決定する権限を付与する条項(消費者契約法8条1項2号、4号)
上記と同じく、事業者に故意や重大な過失があって損害賠償責任が生じるにもかかわらず、責任を免除する規定を一方的に設定していたり、「賠償の金額は当社が決定する」として事業者が一方的に決めるような規定は無効になります。

 

ユーザーの解除権を放棄させる条項や、事業者にユーザーが解除権をもつかどうかを決定する権限を付与する条項(消費者契約法8条の2)
サービスやアプリの利用を途中でユーザーが解除することができないようにあらかじめ放棄させることはできません。

 

ユーザーが後見開始、保佐開始、補助開始の審判を受けたことのみを理由として、事業者に解除権を付与する条項(消費者契約法8条の3)
後見開始、保佐開始、補助開始を理由にユーザー側が解除することは問題ないのですが、それだけを理由として事業者が解除できるとすることは消費者契約では認められていません。

 

ユーザーが支払う損害賠償の額を予定する条項や違約金を定める条項のうち、事業者に生ずべき平均的な損害額を超える部分(消費者契約法9条1項1号)
例えば、ユーザーに禁止行為などがあって事業者が損害賠償をすることを想定して、ユーザーの賠償額は「一律1億円とする」などと高額に設定することは無効になる可能性があります。

 

利用者が支払う遅延損害金を定める条項のうち、未払額について年14.6%の利率を超える部分(消費者契約法9条1項2号)
消費者契約では、遅延損害金は年14.6%までとされています。
ですので、年20%といった利率を定めることはできません。
また、利用規約を作成する事業者からすると、一部の条項が無効になった場合に利用規約の全てが無効になるというのは避けなければなりません。
そのため、利用規約に、万が一ある規定が無効になった場合でも、それ以外の部分は依然として効力がある旨を定めておくことが大切です。

 

 

利用規約の作り方

利用規約のテンプレート

以下のページから、利用規約のテンプレートをダウンロードすることができます。

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IT法務に関する書式集

どのようなサービスを提供・運用するかによって、利用規約に記載すべき内容は異なります。

このテンプレートでは、一般的な利用規約に必要となる条項を規定していますので、必要な部分を修正することで、さまざまなサービスの利用規約に活用することができます。

テンプレートのダウンロードは無料ですので、是非ご利用ください。

 

利用規約の3つのポイント

利用規約の3つのポイント

①ユーザーが読みやすく理解しやすい内容にする

せっかく利用規約を作成しウェブサイトなどに掲載したとしても、ユーザーが利用規約をきちんと読まずにサービスを利用してしまうと、さまざまなトラブルが生じるおそれがあります。

事業者としては、無用なトラブルを避けるために、ユーザーに利用規約をしっかりと読んで理解してもらう必要があります。

しかし、利用規約のボリュームがあまりにも多く長文が続くと、ユーザーは面倒になってほとんど読まないというのが実情です。

また、難しい言葉や専門用語がいくつも出てくるような利用規約は、一度読んだだけではユーザーは内容を理解することができません。

そのため、利用規約は、ユーザーが読みやすく、理解しやすい内容にすることが重要です。

 

③利用規約が無効とならないように留意する

すでに説明したとおり、利用規約の中にユーザーにとって不当な条項があると、民法や消費者契約法によってその条項が無効となってしまう可能性があります。

事業者としては有効であると考えている条項が無効とされると、予期せぬトラブルや被害が生じることもあります。

利用規約の作成や変更に際しては、条項が無効とならないように留意しましょう。

 

③利用規約に詳しい弁護士に相談する

利用規約の作成や変更にあたっては、民法や消費者契約法などの規定に反しないようにする必要がありますが、その他にも、個人情報保護法など、さまざまな法的な知識が必要となります。

また、利用規約は自社のサービスの内容に合った内容にする必要があり、サービスの内容の変化や法令の改正などに対応して、常にアップデートすることが求められます。

しかし、自社のサービスの内容に適切に対応した利用規約を作ることは簡単ではありません。

このようなことから、利用規約の作成や変更にあたっては、専門家の力を借りることが非常に有効です。

利用規約に精通している弁護士であれば、さまざまな法的観点をふまえて、自社のサービスに適合した利用規約となるよう、適切なアドバイスをもらうことができます。

利用規約の作成や変更の際には、利用規約に詳しい弁護士にチェックしてもらい、適宜アドバイスをもらいながら進めると非常に安心です。

また、事業者が法律事務所と顧問契約を結んでいる場合、その法律事務所の弁護士を顧問弁護士として、日常的・継続的に相談することができます。

以下のリンク先で、顧問弁護士の必要性やメリット、費用などについて詳しく説明しています。

 

 

利用規約についてのQ&A

利用規約に違反したら逮捕される?

利用規約に違反したこと自体で、逮捕されることはありません。

 

ただし、利用規約に違反した場合については、事業者によってさまざまなペナルティが定められています。

典型的なものとしては、サービスやアカウントの利用停止です。

悪質なケースでは、損害賠償責任が発生して事業者から多額の賠償金を請求されるおそれもあります。

通常、利用規約に違反した場合にどのようなペナルティが課せられるかについては、利用規約に記載されていますので、利用規約をよく読んだうえで、違反とならないように気を付けてサービスを利用しましょう。

 

利用規約は読まなくても効力を持つ?

利用規約を読まずにそのサービスを利用した場合、その利用規約は効力を持ち、ユーザーに有効に適用されることとなります。

多くのウェブサービスやアプリにおいては、その利用にあたって、利用規約に同意することが前提となっているのが一般的です。

そのため、サービスを利用したユーザーは、利用規約に同意したものと扱われ、利用規約の効力が生じることになるのです。

ですので、見ていない、知らないは基本的に通用しません。利用者はできる限り、利用規約を読んでサービスやアプリを利用するようにしましょう。

 

利用規約はPC・スマホで同意できる?

PCやスマートフォン上で利用規約に同意することは可能です。

PCやスマホの画面で表示できる?

ほとんどの利用規約は、PCやスマートフォンの画面上に表示することができます。

一般的なウェブサービスやアプリなどでは、サービスの利用開始前に、PCやスマートフォンの画面上に利用規約が表示されて、ユーザーに同意が求められます。

 

PC・スマホを使って同意できる?

PCやスマートフォンの画面上に利用規約が表示されている場合、通常は、画面下部などに「利用規約に同意する」旨の同意ボタンが配置されているはずです。

この同意ボタンをクリックまたはタップすることによって、PCやスマートフォン上で利用規約に同意することができます。

 

利用規約に同意しないでアプリを利用できる?

利用規約に同意しないでそのアプリを利用することはできません。

 

アプリなどの利用者は、利用規約の定めに従ってそのアプリを利用しなければなりません。

そのため、利用規約に同意しないでそのアプリを利用することはできません。

一般的な利用規約では、その利用規約に同意しない限りそのアプリを利用できないことが明記されていますので、アプリの利用前に利用規約をよく読んで、同意のうえで利用するようにしましょう。

 

 

まとめ

以上が、利用規約について、その意義や効力、利用規約を変更するための条件や利用規約が無効となる場合のほか、利用規約についてのさまざまな注意点についての説明です。

今日では、さまざまなアプリやウェブサービスが次々と登場しており、多くの人が新たなサービスを利用しています。

そのため、サービスを提供する事業者としては、ユーザーとのトラブルが生じないよう、不備のない利用規約となっているか確認しましょう。

また、サービスを利用するユーザーは、利用の開始前に利用規約をよく読んで、どのような行為が禁止行為とされているかという点や、利用規約に違反した場合どのようなペナルティが課されるのか等についてよく確認しておくことが重要です。

 

 

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