当事務所のIT弁護士が解説します。
保守契約とは
開発されたシステムに不具合はつきものであり、現実にユーザーがこれを使用してみると、当初予想できなかった問題に直面することも多いです。
そこで、ユーザーが、問題が発生した場合や、当初のシステム内容の改良を求めたい場合に、迅速な解決を受け、システムを効率的に利用できるようなシステム保守をしてもらうことを内容とする契約を締結することがあります。これを保守契約といいます(その他、運用契約、保守管理契約等様々な名称で呼ばれます)。
瑕疵担保責任との関係
システム開発ベンダーは、完成したシステムに瑕疵があれば、それを修補する義務を負います(瑕疵修補責任、民法634条)。
①保守の義務者は誰か
システム開発ベンダーと保守ベンダーが異なる場合
まず、システム開発ベンダーと保守ベンダーが異なる場合には、システムを開発していないシステム保守ベンダーは、瑕疵修補義務を負いません。したがって、保守契約に基づいた義務を履行するだけです。そのため、システム開発ベンダーに対しては瑕疵の修補を請求し、システム保守ベンダーに対しては、システム開発ベンダーが責任を負わない不具合についての対応業務を委託することもできます。
もっとも、この場合、どちらのベンダーの責任の対象とするのか、できるだけ明確にしておくことが重要になります。
システム開発ベンダーと保守契約を結ぶ場合
次に、システム開発ベンダーと保守契約を結ぶ場合ですが、一般的に、保守契約で合意される範囲は、ベンダーが負う瑕疵担保責任よりも広くなります。
そのため、例えば、ユーザーのミスや使用方法を熟知していないことによる障害への対応義務は、瑕疵担保責任の範囲外です。
一方で、そのような部分も含めた対応業務を任せたい場合は、保守契約を締結することで、それも対応業務の範囲内とすることができます。
②保守期間はいつまでか
瑕疵担保責任を負う期間は、6か月や1年と限定される場合が多く、その期間を経過すると、ベンダーは瑕疵修補義務を負わないため、ユーザーは、ベンダーに対し対応を求めることができなくなります。
一方、瑕疵担保期間経過後も継続的に不具合対応をしてもらうことを目的として、そのような内容の保守契約を締結しておくことができます。このように、システム不具合に対する対応をある程度長期的に求めることができるのが、保守契約のメリットといえます。
ポイント
point1 保守契約を、システム開発ベンダー自身と締結する
①まずは、保守契約を、システム開発ベンダー自身と締結するのか否かです。
開発ベンダーと保守ベンダーを別にした場合には、保守ベンダーがシステムそのものについて十分な知識を有していないこともあり、その理解に時間がかかり、対応が遅れることになります。
また、保守にあたり、プログラムを複製、翻案、改変する権限を有しているのかどうかも問題となります。
そして、開発ベンダーがソースコードを開示していない場合、実際の保守は困難になります。
一方で、開発ベンダーと保守ベンダーが同一であれば、このような問題は生じません。
point2 何に起因する障害が発生しているのかを特定する
②次に、何に起因する障害が発生しているのかを特定する必要があります。そして、それを誰に修復してもらうのか、特に、開発ベンダーと保守ベンダーが異なる場合は重要となります。
point3 中途解約に関する条項を明文で規定しておく
③保守契約は、継続的な契約であり、例えば1年といった期間が定められます。
そのため、中途解約をしたい場合、そもそも解除ができるのか、できるとしても損害が生じないか(賠償しなければならないのではないか)といった問題が生じえます。
したがって、中途解約に関する条項を明文で規定しておく必要があります。
保守契約でお悩みのIT企業の方は、保守契約に詳しい弁護士への相談をおすすめします。
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