当社では、あるシステム開発を進めていたのですが、ユーザーとの信頼関係が崩れたため、今般、契約関係を解消しようと考えています。
しかし、開発自体は頓挫しているため、請負契約における「仕事の完成」には至っていません。
このような場合、民法改正によって何か影響はあるのでしょうか。
この質問について、弁護士がお答えします。
仕事の完成と報酬請求権
現行法では、請負人が仕事を完成させなければ報酬を請求することはできません。そして、「仕事の完成」は「仕事が当初の請負契約で予定していた最後の工程まで終えているか否かを基準として判断すべき」とされていました(東京地裁平成14年4月22日判決)。
そのため、ユーザー側に帰責性がない限り、報酬を請求することは基本的にできませんでした。
改正法では、「可分な部分」について「注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす」ことが明文化されました。
つまり、最後の工程まで終えていなかったとしても、途中の部分までで報酬を請求できることが明確になりました。
瑕疵
改正法では「瑕疵」という表現が「契約の内容で定めたものと適合しないもの」(=不適合)と改められました。
現行法では、仕事完成前は債務不履行責任、完成後は瑕疵担保責任と考えられていましたが、今後はその区別がなくなり、完成の前後を問わず債務不履行責任となります。
不適合が発見された場合の請求期間
現行法では、瑕疵があった場合の修補や損害賠償責任を負うのは、目的物を「引き渡した時から一年以内」でした。
一方、改正法では「その不適合を知った時から一年以内」となったため、期間が延長されました。
そのため、引き渡した時から1年が経過した後に発見された不具合についても請負人は責任を負わなければならない点に注意が必要です。
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