取締役の違法行為に対して、会社はどのような請求ができますか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

取締役が会社の目的の範囲外の行為、その他法令・定款に違反する行為を行った結果、会社に損害を与えた場合、会社はその取締役に対して、損害賠償請求ができます(会社法423条1項)。

これは、違法行為を行った後の措置ですが、事前の措置としては、株主の請求によって取締役の違法行為を差止請求があります。

 

取締役の違法行為の差止請求

取締役の違法行為の差止請求は、以下の要件を満たした場合に認められます。

会社の目的の範囲外その他法令・定款に違反する行為であること

会社の目的の範囲外の行為というのは、定款に違反する行為の一場面です。

通常、会社法において、目的の範囲内であるかの判断は、「会社の目的を達成するために必要又は有益な行為と客観的に認められるかどうか」により判断され、取締役の主観的な意図は考慮されないと解されています。

しかし、この判断基準は、代表者の行為の効果が会社に帰属するか否かの場面での判断基準であり、取引の安全が考慮されなければならないのに対し、株主による違法行為の差止は、内部的な問題であり、取引の安全を考慮する必要はありません。

そのため、取締役の違法行為の差止請求においては、取締役の主観的な意図が考慮されると解されています。

したがって、例えば、取締役が私的に流用する意図で銀行から借入れる場合、客観的には通常の取引のための借入れでも、差止め請求の対象となります。

六法全書法令に違反する行為とは、①個別具体的な禁止規定に違反する場合(例えば、株主総会決議を経ないで事業の重要な一部を譲渡する:会社法467条)だけでなく、②一般的な注意義務(会社法330条、民法644条)や忠実義務(会社法355条)に違反する場合も含まれます。

会社に著しい損害が生じるおそれがあること

違法行為差止請求は、取締役に法令・定款違反の事実をもって、常に認められるものではありません。

本来、会社が判断すべきことに株主が介入するのは最小限に押さえるべきであることから、当該行為によって「会社に著しい損害が生じるおそれがあること」が要件となります(ただし、監査役設置会社及び委員会設置会社の場合には、「会社に回復することのできない損害が生じるおそれがあるとき」が要件です。)。

「回復することのできない損害」とは、損害が絶対に回復できないような場合に限定されず、費用や手数料などの点から、回復に相当の困難があるような場合も含まれます。

これに対して、「著しい損害」とは、その損害の質および量において著しいことで、損害回復の可能性の有無は問いません。

 

弁護士へご相談ください

取締役の行為の違法性判断には、専門的な知識、経験が必要です。

当事務所には、企業法務に特化した企業法務チームがあり、企業をサポートしています。

詳しくは、企業法務に詳しい当事務所の弁護士まで、お気軽にご相談ください。

    

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