債務不履行とは、債務者が債務の本旨に従った履行をしないことをいいます。
債務不履行は経営上の大きなリスクのひとつといえ、その意味を正しく知っておく必要があります。
この記事では、債務不履行に関して、その意味合いや問題となる事例、気を付けるべきポイントなどを弁護士がわかりやすく解説します。
法律の前提知識がなくとも理解できるよう、かみ砕いて説明していきますので、債務不履行についてお調べの方は、ぜひ最後までお読みください。
債務不履行とは
債務不履行とは、文字どおり債務が履行されないことであり、もう少し厳密に表現すると、「債務者が債務の本旨に従った履行をしないこと」をいいます。
「債務の本旨(ほんし)」や「履行(りこう)」など、馴染みの薄い言葉かもしれませんが、順を追ってご説明しますのでご安心ください。
債権・債務とは
まずは「債務」と、これとセットで登場することの多い「債権」という言葉の意味を解説します。
「債権」とは、「特定の人に対して何らかの行為をするよう求めることのできる法律上の権利」をいいます。
「特定の人」や「何らかの行為」など、表現が漠然としているためピンと来にくいかもしれませんが、誰にどのような行為を求めることができるのかは債権の内容によって千差万別ですので、一般的な意味としては上記のようになります。
債権は、「特定の人」に対して求めることができるのがポイントです。
特定の人に対して請求できるということは、請求される側の人から見ると、「義務を負っている」ということになります。
この義務を「債務」といいます。
債務とは、債権を請求される義務者の側から見たものであり、いわばコインの裏表のような関係です。
債権と債務は意味が正反対ではあるものの、別のものを指しているのではなく、同じ事柄を反対の視点から表現しているということができるのです。
なお、債権を有している者を「債権者」、債務を負っている者を「債務者」といいます。
抽象的な説明となりましたので、具体的な事例を見てみましょう。
文具店Aは、文具メーカーBに対し、1本100円の黒ボールペンを100本注文した。
この事例で、AとBのどちらが債権者でどちらが債務者に当たるかお分かりになるでしょうか。
正解は、「ABともに債権者であり、債務者でもある」です。
たしかに、注文した側のAは、100円×100本で1万円の代金を支払う債務を負っていますが、かわりにBの方では、黒ボールペン100本を納品するという債務を負っています。
つまりボールペンの引き渡しについていえば、注文したAが債権者でBが債務者ということになるのです。
ひっかけ問題のように感じられたかもしれませんが、債権や債務について論じるときには、「何についての債権・債務なのか」を抜きにしては語れないことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
日常用語として「債務者」というときには、「お金を借りて返さなければならない人」の意味で使われることも多いですが、実際の債務の内容は多種多様であり、金銭の支払いや物の引き渡しに限られません。
たとえば、ピアノや英会話の教室を例に取ると、教師は物を引き渡すのではなく、生徒に対してピアノ演奏や英会話の指導をするという債務を負うことになります。
債務不履行の種類
債務者が「債務の本旨に従った履行をしないこと」を、債務不履行といいます。
「本旨」とは「本来の趣旨」を縮めたものであり、債務が契約によって生じたものである場合は、「契約の趣旨」と読み替えてもよいでしょう。
「履行」とは、義務を果たして権利の内容を実現することをいいます。
すなわち債務不履行には、債務がまったく履行されない場合のほか、一応履行されているものの、債務の趣旨に従った履行とは評価できない場合も含まれることになるのです。
債務不履行には、不履行の態様に応じていくつかのパターンがあり、次の3つの類型に分けて説明されるのが一般的です。
- 履行不能
- 履行遅滞
- 不完全履行
履行不能
履行不能とは、債務が「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であること」をいいます。
もう少しシンプルに言い換えると、債務を履行することが物理的または社会的に不可能であるということです。
物理的に不可能な例としては、一点ものの壺を売買したものの、引き渡しの前に壊れてしまったような場合が考えられます。
量産されている工業製品と異なり、一点ものの芸術品などは同じ物を再調達することができませんので、破損してしまえば引き渡しは履行不能ということになります。
社会的に履行不能となる例としては、たとえばある木材の輸入を依頼したところ、その木材が国際条約によって希少種として指定され、輸入禁止となったような場合があります。
この場合、条約を無視すれば国内に持ち込むこと自体は可能なので、輸入することが物理的に不可能とはいえません。
しかし債権の効力として、「条約違反を犯してでも納品しろ」という強制は当然できませんので、社会的に不能になったと評価できるのです。
会社の経営状態が悪化し運転資金が底をついたような場合、債務の支払いが不可能になることもあるかと思います。
このような場合、状況としては支払不能といえますが、法的な意味での履行不能には当たりません。
世の中から金銭というものが消えてなくなるわけではない以上、将来的に何らかの形で資金調達して履行できる可能性が、完全にゼロとはいえないからです。
したがって金銭債務については、いかに支払いが困難な状況であっても、法的には履行不能ではなく「支払いが遅れているだけ」(後に説明する履行遅滞)と評価されることになります。
このことは、「金銭債務に不能なし」というフレーズで表現されることもあります。
語呂がよく耳にも残りやすいかと思いますので、金銭債務は履行不能とならないことを覚えていただければと思います。
履行遅滞
履行遅滞(りこうちたい)とは、債務者が、債務を履行することが可能であるにもかかわらず、所定の期日に債務を履行しないことをいいます。
債務がいつ履行されるのか、履行時期は債務の重要な要素ですので、一般的な商取引では多くの場合、債務の履行期限(「履行期」ともいいます)を契約上明確に定めるのが通例です。
このようにして履行期が定められているにもかかわらず、これを過ぎても債務が履行されないことがあります。
これが履行遅滞です。
なお、「履行することが可能であるにもかかわらず」とあるのは、そもそも履行が不可能な場合、今後においても履行される望みがないことから、履行遅滞ではなく履行不能と評価されるためです。
不完全履行
以上は、およそ債務が何らの形でも履行されていないケースですが、不完全履行はその名のとおり、不完全ながら債務が履行されている場合を言います。
ただし、履行が不完全、すなわち債務の本旨に従ったものでない以上、債務不履行には違いありません。
冒頭の文具店の事例でいえば、100本のボールペンが納品されたが、黒を注文したにもかかわらず赤のボールペンが納品されたような場合が、不完全履行の例といえます。
他には、何かの修理を業者に頼んだときに、作業はしてくれたもののちゃんと直っていなかったような場合も、不完全履行の例といえます。
債務不履行の効果
どのような場合が債務不履行になるか、3つの類型をご紹介しました。
ここからは、債務不履行に該当する場合に、法的にどのような効果が生じるのかを解説します。
債務不履行の効果、すなわち債務不履行の際に債権者側で取ることのできる手段は、大きく次の3つに分けることができます。
- 履行請求
- 損害賠償
- 契約解除
履行請求
債務不履行とは、本来履行すべき債務が履行されていない状況ですので、「不履行となっている債務を履行してくれ」と請求することができます。
不履行状態にある債務を履行するように請求することを、履行請求といいます。
実務上は、状況確認も兼ねて、まずは電話やメールなどで相手方にコンタクトをとって履行を促すことになるでしょう。
このような催促の連絡も履行請求の一種とはいえますが、実際に債務が履行されるかは相手方の任意の協力に期待するほかなく、強制力がありません。
もし相手が債務の履行に応じなければ、債務の性質上強制になじまない場合を除き、裁判所に対して訴えを起こし、勝訴判決を得て強制的に債権の内容を実現することになります。
第四百十四条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 (略)
引用元:民法|電子政府の総合窓口
「債務の性質がこれを許さないとき」とは、債務者の意思を特に尊重すべきであり履行の強制に適さない場合をいい、芸術家の芸術作品を作る債務などがよく例として挙げられます。
芸術作品については、作者に創作の意欲がなければ、強引に作成させたところで良いものにはならないという考えによるものです。
なお、履行請求は債権を実現する手段としてオーソドックスではありますが、上記の債務不履行の類型のうち、履行不能の場合には履行を請求することはできません。
いくら法的に権利があるといっても、実現不可能なことを強制するわけにはいかないからです。
この場合は、履行請求以外の手段を検討することになります。
第四百十二条の二 債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。
2 (略)
引用元:民法|電子政府の総合窓口
損害賠償
債務不履行によって、債権者が損害を被ることがあります。
このような損害は、債務者が本来の趣旨どおりに債務を履行してくれていれば生じなかった損害ですから、相手方に不履行の責任がない場合を除いて、これを賠償するよう請求することができます。
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 (略)
引用元:民法|電子政府の総合窓口
損害賠償を請求する際のポイントは、「損害が発生していること」と「債務者に不履行の責任があること」という2点です。
1点目は、損害の発生です。
債務不履行を理由に損害賠償を請求する際は、損害が発生していることが条件となります。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、意外と見落とされがちなポイントです。
ふたたび、ボールペンの事例を思い出してみてください。
ボールペンを発注した趣旨が、「そろそろ在庫が少なくなってきたから、補充しておこう」というものだったとします。
この場合において、ボールペンの納品が約束の期日から数日程度遅れたとすると、どうでしょうか。
数日とはいえ、履行期から遅れることは履行遅滞といえますので、債務不履行に当たることにはなります。
しかし、その数日の遅滞によって、文具店が特に何かの損害を被ったということはありません。
損害賠償とは文字どおり生じた損害を賠償するものであって、約束を守れなかったことに対する迷惑料や詫び賃とは異なります。
いくら債務不履行といっても、損害が発生していなければ賠償する余地がないのです。
賠償の対象となり得る損害が発生している事例としては、たとえば次のようなものが考えられます。
車を購入したが、納車が1ヶ月遅れたため、その間レンタカーを借りて対応した(1ヶ月分のレンタカー代が損害)
次に、債務不履行について相手方たる債務者に責任がない場合は、賠償請求はできません。
上記の条文でいえば、「ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」という部分がこれを表しています。
法律の世界では、「その人に責任を帰することができる事情」という意味で、「帰責事由」や「帰責性」という表現が使われます。
難解に見えるかもしれませんが、債務不履行をその人のせいにしてもよいか、責任を問えるか、ということをいっているに過ぎません。
最終的には契約の解釈によりますが、この事例では、たとえば本人が日時を勘違いしていたのであれば責任あり、天候の影響で交通機関が麻痺していたのであれば責任なしということができそうです。
契約解除
最後が、契約の解除です。
相手方が約束どおりに契約を履行してくれないのであれば、履行を求めるよりも、その相手との関係は解消してしまって、別の相手と改めて契約したいという場合もあると思います。
そのような場合には、契約を解除することになります。
解除をする場合、これに先だって、まず相手方に対して催告、すなわち履行を促す必要があります。
解除によって契約ははじめからなかったものとなりますので、そのような強い効果を生じさせる前に、まずは契約の実現を試みようということです。
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
引用元:民法|電子政府の総合窓口
また、例外的に催告なく契約を解除できる場合もあります。
よくある例を挙げれば、履行不能の場合や、債務者が明確に履行を拒絶したような場合がこれに当たります。
この例のようにはじめから履行が期待できないのであれば、無催告での解除が認められるのです。
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三~五 (略)
2 (略)
引用元:民法|電子政府の総合窓口
ただし、債務不履行の原因が債権者側にあるときは、債権者側から解除することはできません。
第五百四十三条 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。
引用元:民法|電子政府の総合窓口
対応 | 特徴 |
---|---|
履行請求 | 履行不能の場合は不可 |
損害賠償 | 損害の発生と債務者の帰責性が要件 |
契約解除 | 催告解除が原則であるが、履行不能などの場合は無催告解除も可 |
債務不履行と不法行為との違い
ここまで、債務不履行について説明してきました。
民法を勉強したことがある方の中には、「不法行為とは何が違うのか?」という疑問を持たれた方もいらっしゃるかもしれません。
実際、これらは場合によっては同時に発生している(債務不履行と不法行為のいずれと捉えることもできる)こともあるため、混乱の生じやすいところです。
そこで、債務不履行と不法行為の違いについても簡単にご説明しておきます。
不法行為とは
不法行為とは、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」することをいい、損害が生じていれば、これを賠償しなければなりません。
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:民法|電子政府の総合窓口
たとえば、脇見運転で歩行者を跳ねて怪我をさせたような事故などが、不法行為の典型例です。
この場合、運転中にもかかわらず脇見をしてしまったところに過失がありますが、これをもって債務不履行ということはできません。
債権は「特定の者に対して請求できる」という点を思い出してください。
たしかに、ドライバーは事故を発生させないよう安全に運転する義務を負っているといえますが、それはこの被害者個人に対して負っている義務ではなく、車を運転する上で負う一般的な義務といえます(すなわち「債務」ではない)。
したがってこのケースは、債務不履行ではなく不法行為と考えることになります。
債務不履行は、すでに債権者・債務者という関係性が存在している場合において発生するのに対し、不法行為は、そのような関係がない場合でも成立するといえます。
以上は不法行為のみが成立し債務不履行にはならないケースですが、債務不履行と不法行為のいずれとも捉えられるケースも存在します。
たとえば、同じ車の事故でも、タクシーが乗客に怪我をさせた場合を考えてみます。
このようなケースについては、不法行為であると同時に、「乗客を安全に目的地に送り届ける」という運送契約上の義務に違反したともいえ、債務不履行に当たると見ることもできるのです。
債務不履行との違い
このように債務不履行と不法行為は、すでに債権者と債務者の間柄であるかや、取り得る対応方法などの点で相違します。
以下に両者を整理しますが、実務上両者の区別は簡単ではなく、実際には弁護士などと相談しながら対応を検討することになろうかと思われます。
これらの法的な違いを厳格に突き詰めるよりも、まずは債務不履行と不法行為のいずれと捉えるかが問題となる場面があることを知っておいていただければと思います。
発生状況 | 対応方法 | |
---|---|---|
債務不履行 | 債権者・債務者間で発生 | 履行請求、損害賠償、契約解除 |
不法行為 | 何らの関係がなくとも発生 | 損害賠償 |
債務不履行のよくある事例と対応方法
債務不履行とは、債権者の立場からすると、債権が回収ないし実現されないことを意味します。
すなわち、債務不履行の状態を放置することは、会社の損失に直結し得るということです。
債権の内容は会社の業種や業態によって大きく変わる部分もありますが、ここでは債務不履行のうち、特に企業取引においてよく生じると考えられる事例と、その対応方法をご紹介します。
共通する対応(損害賠償請求)
損害賠償については、損害が発生していれば、債務不履行の類型を問わず請求を検討することになります。
履行不能への対応
例
取引対象物の消滅や破損による納品不能
対応
履行不能の場合、もはや債務がその内容どおりに履行される可能性がないため、履行を請求することはできません。
その反面、催告なしの解除が許されていますので、契約の解除を検討することになります。
履行遅滞への対応
例
売掛金や賃料等の支払遅延、納品の遅れ
対応
履行遅滞が発覚した場合、状況を確認し履行を催促することになります。
債務者に連絡を取り、遅滞の理由や、履行する意思の有無、履行するとしていつまでに履行できるのかを確認します。
ただし債務者は、債権者による追及から逃れたいばかりに、嘘やでまかせによってその場をしのごうとすることがあります。
このため、債務者の言い分を鵜呑みにすることは危険です。
特に、債権の対象が高価ないし高額なときは、万が一債務不履行のまま債権を回収し損ねると、経営に与える影響が大きくなってきます。
そのような場合は、弁護士などの専門家に速やかに相談することをおすすめします。
不完全履行への対応
例
納品物の欠陥、作業内容の誤り、契約に付随する義務の不履行(不手際で物を傷つけるなど)
対応
不完全履行の場合、形の上では債務が履行された体裁になっており、債務者の側でも債務不履行に気づいていないケースがあります。
そこで、当初の履行のどのような点に問題があるのか整理した上で、改めて完全な履行を求めることになります(履行請求の一種ですが、追って完了するということで「追完」ということがあります)。
ただし債務の性質によっては、追完が不可能なものもあります。
タクシーが乗客に怪我をさせた事例でいえば、すでに怪我という損害が生じている以上、「今後安全運転に努めます」では済まないのです。
債務不履行への対応を整理すると、次のようになります。
- 履行不能の場合は契約を解除し、履行遅滞及び不完全履行の場合は履行請求か契約解除を選択する。
- 債務不履行の類型にかかわらず、損害が生じていれば損害賠償請求を検討する。
履行不能 | 履行遅滞 | 不完全履行 | |
---|---|---|---|
履行請求 | ✕ | ◯ | |
契約解除 | ◯ | ||
損害賠償請求 | △(損害が生じていれば可) |
債務不履行のポイント
債務不履行には時効がある
債務不履行に対しては履行や損害賠償を請求できますが、これには時効があります。
所定の期間これらを請求しないでいると、権利が時効により消滅し、もはや請求できなくなるのです。
具体的には、債権や損害賠償請求権は、権利を行使できると知ったときから5年間、又は権利を行使できるときから10年間行使せずにいると、消滅時効にかかります。
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
ただし、商人間の売買においては、買主は取引の目的物に対する確認検査義務を負っており、納品から6ヶ月経過した後においては追完や損害賠償の請求などができなくなりますので注意してください(商法526条)。
引用元:商法|電子政府の総合窓口
契約内容を明確にする
債務不履行とは、債務者が債務の本旨に従って履行しないことでした。
債務の本旨、すなわち債務の本来の趣旨がいかなるものであるかは、契約の解釈によって決定されます。
債務者がどのような義務を負っているのか契約上不明確であると、何が債務の本旨であるかを巡って、相手方と認識に食い違いが生じるおそれがあります。
契約解釈上の疑義をなくし紛争を未然に防ぐためにも、契約を締結する際は、債務の内容が明確になっているかといった点からのリーガルチェックが重要になってくるのです。
損害額の証拠資料を集める
損害賠償は、債務不履行があれば当然に請求できるものではなく、債務不履行によって損害が生じた場合に請求できるものでした。
損害賠償を請求するに当たっては、相手方の債務不履行によっていかなる損害が生じたのかを、証拠によって明らかにする必要があります。
債務不履行によって費用が発生した場合にはその領収書を保管するなどして、証拠資料を残しておくようにしましょう。
債権回収に強い弁護士に相談する
債務の不履行に対しては、法的に取ることのできる手段がいくつかあります。
債務者が協力的で、本旨に従った履行が期待できるケースであれば問題は大きくないかもしれませんが、そうでない場合には、弁護士を交えて法的対応を検討することになります。
債権回収では、スピード感が鍵になってきます。
回収不能という結末を可能な限り回避するためには、債権回収に強い弁護士に相談することが大切です。
なお、日常的に大量の取引や契約が発生するようであれば、弁護士と顧問契約を結んでおくこともおすすめです。
顧問契約によって常日頃から弁護士との接点を持っておくことで、トラブルの際に迅速な対応が可能となります。
顧問弁護士のメリットについては、こちらをご覧ください。
まとめ
このページでは、債務不履行について、その意義やよくある事例、対応方法などについて解説しました。
最後に、記事の要点を整理します。
- 債務不履行とは、「債務者が債務の本旨に従った履行をしないこと」であり、「本旨」とは債務の本来の趣旨(契約の趣旨)のことである。
- 債務不履行は一般的に、履行不能、履行遅滞、不完全履行の3類型に分けて説明される。
- 債務不履行に対しては、履行請求、契約解除、損害賠償請求などの対応方法がある。ただし、履行不能の場合や債務の性質上強制に適さない場合は、履行請求はできない。
- 債務不履行への対応は債権回収に強い弁護士に依頼することが重要であり、弁護士と顧問契約を結んでおくと特に手厚いサポートが期待できる。