新型コロナウイルスの流行により、緊急事態宣言が出され、それに伴い、法的な義務は休業要請を出された業種が多くあります。
また、緊急事態宣言が解除され、休業要請が解除されても、新型コロナウイルスの流行前と全く同じように顧客が来るということはなく、売上が低下して資金繰りに困っている企業や個人事業主も多く出ています。
そのような中で、資金繰りに困っている企業や個人事業主にとって、固定費となる賃料の負担が大きくのしかかっています。
そこで、様々なところで、賃料に関する法的支援の必要性が叫ばれています。
賃料減額については、借地借家法に規定がありますが、具体的な減額の幅については規定がありませんし、調停や裁判など時間もかかります。
したがって、賃料減額や支払猶予については、家賃交渉が必要になります。
賃料に関する支払いに関しては、減額のほかに支払猶予というものもあります。
支払猶予とは、銀行の借入金の返済についてのリスケジュールと同様に、家賃の支払を一定期間猶予してもらうというものです。
支払猶予には、賃料の100%の支払を猶予してもらう方法のほか、50%は当初の契約どおりの期限に支払い、残りの50%については翌月に支払うことにするといった方法も考えられます。
家賃に関する法律
こうしたテナント家賃に関しては、民法はもちろん、借地借家法という法律がルールを定めています。
借地借家法では、土地については11条、建物については32条で賃料の増額及び減額についてそれぞれ定めています。
これらの規定によれば、以下のように、賃料の価格が不相当となった場合、オーナー側、借主側で増額、減額の請求を行うことができることになっています。
- 土地や建物に対する租税その他の公課の増減
- 土地や建物の価格の上昇又は低下
- その他の経済事情の変動
この規定は、賃貸借契約が比較的長期間の契約となるため、期間の経過により、賃料が当初決めた金額から不相当となった場合に、変更を求めることができるようにするために設けられています。
家賃の減額請求の方法
したがって、今回の新型コロナウイルスの感染拡大という事情でただちにこの規定に基づいて賃料の減額を請求できるかどうかは不透明ですし、仮に減額が認められるとしても、具体的な減額幅については法律で定められているわけではありません。
この規定による減額請求は、まずはオーナーと借主で賃料減額について協議を行い、協議が整わない場合に裁判所がその是非を判断するという形になります。
裁判を提起するためには、民事調停という手続も事前に行っておかなければならず、非常に時間がかかります。
また、賃貸借契約のうち、定期建物賃貸借の場合、賃料増減額に関する32条の適用が排除する特約が結ばれると、この請求を行うことができません。
また、家賃については、契約で決めた内容で支払を行うのが原則であるため、支払猶予について法律で明確に定められてはいません。
そうすると、賃料減額や支払猶予については、現状の法律では完全にフォローされているとはいえない状況です。
ですが、だからといってすぐに諦める必要はありません。
今回の新型コロナウイルスによる影響は誰もが予測していなかったもので、その影響も世界経済を揺るがすほどのインパクトで、1929年の世界恐慌にも匹敵する出来事です。
したがって、オーナーと借主双方で話し合いを行い、双方で合意が成立すれば、賃料についての減額や支払猶予といった条件の変更は有効になります。
家賃の減額はオーナーにとってもメリットがある?
一見すると、賃料減額や支払猶予はオーナーにとって、メリットがないようにも思えます。
しかしながら、オーナーにとっても、借主のビジネスがうまくいかずに、破産してしまう事態になれば、テナント収益が一切入ってこなくなるわけですし、次の借主がすぐに見つかるかどうかもこの状況下では不透明といわざるを得ません。
したがって、オーナーにとっても、できるだけ現在の借主と契約を継続したほうがよいというケースも多くあります。
そのため、オーナー、借主ともに家賃交渉を行う必要性やメリットがあるといえるのです。
家賃交渉のポイント
以下では、家賃交渉を行うにあたってのポイントをいくつか解説していきます。
POINT① 相手側の状況にも配慮する
契約交渉を行う場合、自分の側の都合のみを考えて進めてくるケースがあります。
もちろん、契約において、自分の方が少しでもメリットになるようにすることは非常に重要です。
しかしながら、その傾向が強すぎると、相手方も意固地になり、双方に取りつく島がなくなってしまい、交渉が決裂してしまう可能性があります。
そのため、家賃交渉を行う際は、それぞれの相手方の状況にも配慮して進めていくことが大切です。
POINT② できるだけ早めに始める
特に借主の側には、オーナーに賃料減額や支払猶予の話をしづらいという気持ちがあります。
そのため、支払期限が迫ってから、「実は家賃が払えないのです」と切り出すということがあります。
しかしながら、オーナーにも住宅ローンや借入金の返済があり、直前になって支払えないといわれても困ることが多いはずです。
この場合、「今さら言われても遅い」ということになりかねません。
言いづらい話であることは間違いないですが、だからこそ家賃交渉は手遅れになる前に早めに始めることが大切になってきます。
POINT③ オールオアナッシングを求めすぎない
今回の状況下では、オールオアナッシングを追求しすぎると互いにメリットを受けることができなくなります。
したがって、100%の支払いは維持するが、支払方法を柔軟に対応するという方法や支払時期は当初のままで80%に減額するといった折衷的な案を検討していくことがポイントです。
オーナー側としても、1度の賃料不払では、信頼関係が破壊されたとまではいいがたいため、すぐに賃貸借契約を解除することは実務上困難だと考えられます。
そうすると、敷金から家賃部分を充当していくことになりますが、これを続けていくと原状回復費用を捻出することが難しくなってくるため、具体的な状況に応じて判断が求められます。
弁護士の活用法
賃料減額や支払猶予について、オーナー、借主それぞれの立場において、自分たちだけで交渉を行うのは難しいケースもあります。
そこで、交渉を弁護士に依頼して任せるという方法も一つの選択肢になります。
一般的に弁護士というとトラブルが発生してからというイメージがありますが、トラブルになっているわけではない段階でも、代理人として交渉を行うことも可能です。
テナント家賃に関してお困りの方や家賃交渉を求められたオーナーの方は、まずは弁護士にご相談ください。
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