違法な税務調査を許さない
税務調査(質問検査権を伴う調査)は、マルサの女で有名な犯則調査とは異なり、対象となる納税義務者の明示又は黙示の承諾を前提とする任意の調査です。
そのため、調査官は納税義務者の承諾なく、その人の家や事業所に立ち入ったり、勝手に捜索したりすることはできません。
しかし、税務調査においては、手続違反があったり、納税義務者の承諾なく違法な調査が行われたりすることがあり、そのような違法な調査を防ぐというのが立ち会った弁護士の第1の役割になります。
数年前の事案ですが、「納税者の管理する倉庫内での無断で写真撮影を行ったこと」を違法とする裁判例(神戸地判平25.3.29)があります。
この裁判例では、倉庫に入ることは納税義務者の従業員が明確に拒否していないので黙示の承諾があるとしつつ、一方で倉庫内での写真撮影については違法としています。
税務調査は、行政官が行うものなので違法なことはしないと思うかもしれませんが、現実には行政官が違法行為を行ってしまうこともあり、この裁判例は、「行政の行為=正当な行為」ではないことを示すいい例です。
しかし、調査官が質問検査権の行使をしてきた際に、納税義務者がそれを拒否することは心情的に難しいだけではなく、どの行為が違法なのか判断するのは困難です。
加えて、正当な質問検査権拒否には罰則規定があり、取引先に反面調査に行かれる可能性や青色申告承認取り消しをしてくる可能性すらあるため、リスクが伴います。
このようなリスクを考慮して納税義務者が正当か違法かの判断をするのは困難なことですので、そういったときに納税義務者の代理人として税務調査に立ち会ってくれる法律および税の専門家が必要となってくるのであり、それが税務調査士の資格を持つ弁護士といえます。
法律に基づいた交渉
また、単に違法行為を防ぐというだけではなく、税務調査にあたって交渉をするということも立ち会った弁護士の重要な役割になってきます。
調査官は税について詳しいと思われがちですが、現実には税法だけではなく通達に従って課税を行っています。
しかし、通達は法律ではなく、課税は法律に基づいてなされています。
この点でも、法律の専門家である弁護士は法律的な観点から交渉を行うことができるので、税務調査士の資格を持つ弁護士を立ち会わせることで、税法に基づいた有効な交渉を行うことができるといえるのです。
法律のどの条文のどの課税要件に、どの事実が当てはまるのか、たったそれだけのことですが、それを聞かれるとしっかり答えられる調査官は多くありません。
違法な調査をされたとしても、税務調査が終わってからでは、基本的には裁判上の救済しかなくなりますし、違法な調査に基づいた課税であっても違法な課税となるわけではないため、裁判上での救済も国家賠償請求による限定的なものとなってきます。
税務調査の時点で納得のいく解決を得るため、一度弁護士にご相談ください。
税務調査で終わらない場合
税務調査で解決せず、更正処分がされた場合には、以下の行政上の不服申立ての制度を利用することになります。
①再調査の請求という更正処分をしてきた課税庁に対しもう一度調査せよという手続き
または、
②審査請求を国税不服審判所にして、審判所の審判を求める手続き
のいずれかを利用するということです。
そして、不服申立てを経ても納得のいかない場合には、裁判所に訴訟を提起することになるのです。
更正処分がされるまで1年ほどが経過していることが少なくありません。
また、①や②を利用すればもう1年はかかることになります。
極めつけに、訴訟までいけば、一審の判決まで2年程度はかかると思ったほうが良いでしょう。
税務調査で終わればすぐに終わったものが訴訟に行ったがために、解決まで4年もかかってしまった…ということにもなりかねません。
このような事態にならないためにも、訴訟をも見据えた判断のできる弁護士が税務調査に立ち会うべきだと言えます。
当事務所では、税理士や税務調査士といった資格を持ち、法律の知識と税知識の両方を有した弁護士が在籍しておりますので、気軽にご相談ください。